何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

誰かにどこかに、愛を②

2021-01-27 23:20:39 | 
もう一冊の、ワンコの日五年目のお告げ本
 
「あなたのいる場所」(沢木耕太郎)
 
こうなったらもうね 
ワンコは私に自分のいる場所探し?自分のポジションの見つめなおしを迫っているとしか思えないよね
「犬がいた季節」(伊吹有喜)では「迷ったときに戻る場所」という言葉を残し
「神様のカルテ 0zero」(夏川草介)では「帰る場所なんて、自分で作るものですよ」と告げ
 
本書はね、長編のノンフィクション作家として名高い沢木氏にしたら珍しい短編集で、しかも少年少女も読むことができる<わかりやすい>短編集を目指して書かれたというので、確かに文体は平易で<作業として、読む>だけなら、たいそう易しい。
だが、ひとたび「あなたがいる場所」というフィルターを通して読むと、かなり残酷な一面も見えてくる。
 
子供であっても、家庭の事情を理解し他所とは違う環境を受け入れるしかないのか、とか
思いがけない事故で子供を亡くしても、親は自分の至らなさを引きずって生きていくしかないのか、とか
平凡な結婚生活を長く送ったとしても、それが略奪婚であったなら、永遠に後ろめたさを感じていなくてはならないのか、とか
生まれた時からどうにも育てにくかった我が子が、天国などに行けようもない犯罪者になったら、その子との記憶にどう折り合いをつければいいのか、とか
 
平易な文章で書かれているが、タイトルの「あなたのいる場所」というフィルターを通して読むと、一頃流行った「本当は怖い昔話シリーズ」的な怖さがある。
 
だけどねワンコ
本書の9編の短編の設定は、いまいち私の心に響くものではなかったので、
ワンコは何を伝えたいのかな?と思いつつ、
著者の本を思い出し、「凍」を手に取ってみたんだよ
手足の指をすべて失ってでも、氷壁を登ることを諦めないクライマー山野井ご夫妻の話というと、無謀な登山家冒険家のようだけど、
危険に身を晒すからこそ、生きること、生きて帰ることの可能性を追求する姿勢も強烈なんだよ
そして、そんなにまでしても、山に登り続けたいという思いも強烈に伝わるんだよ
 
そこが、クライマーの「あなたのいる場所」なんだなと
 
そんな思いで、本書「あなたのいる場所」のページを再びくると、
目が釘付けになったよ
 
さいしょのページに
ただ一行「バスを降りると、そこは」
とあり、
次のページをめくると、
そこに、
タイトルの「あなたのいる場所」が現れるんだよ
 
もう、こうなったらワンコだね
 
沢渡やアカンダナから30分バスに揺れ
釜トンネルを越え、
車窓からあの頂きが少しでも見えた時の胸のときめき
いよいよバスを降りる時の、はやる心 踊る心
 
穂高 上高地
そしてワンコ
 
私のいる場所なんだな
 
昨年春緊急事態宣言の発出を受け、
「上高地はこれからも、ずっとそこにあり続けます」の言葉と共に上高地の全ての宿泊施設は休業された
早期の終息を願うからこそ、昨年は上高地を訪問しなかった
上高地を訪れない夏など、記憶にないというほどなのに…
ワンコのお名前の由来の一つのお山なのに…
 
今年こそ、私のいる場所に戻りたい
 
神降りる地 ワンコのお山
槍ヶ岳山頂より穂高連峰を拝する