もう完全に周回遅れにはなっているのだけれど、
せめて今年のお告げ本は今年のうちに、という立派かつ最低限の目標をたて、認めているんだよ
先月のワンコお告げ本「きたきた捕物帖」(宮部みゆき)には、
ワンコの再臨を待つ私には非情な「生まれ変わりなんてない」という言葉があったのだけど、
その直後の生誕祭のお告げ本には、少し希望がもてる言葉もあり、揺れているんだよ
生誕祭お告げ本はタイトルもズバリ
「犬がいた季節」(伊吹有喜)
昭和の終盤ある高校に紛れ込んだ一匹の白い犬「コーシロー」が、昭和 平成そして令和と、進路や家族関係などに揺れる高校生と彼らのその後の生き方を見守る物語。
本書は、高校で犬を飼えるように学校に働きかけたメンバーである女生徒を中心に、三年ごとに、その年の高3生と犬との関りを短編で繋いでいく連作集なのだが、昭和から平成への時代の移り変わり、阪神淡路大震災、金融恐慌という大きな時代背景と、その当時流行ったもの例えば、「マディソン郡の橋」(ロバート・ジェームズ ウォラー)やルーズソックスに援助交際、たまごっちにノストラダムなどが記されているので、短編のどこか自分の時代を見つけることができ、誰でもそこに自分がいるように感じるかもしれない。
そんな本に、ワンコからのメッセージを見つけたんだよ
それは、コーシローが、大好きな元女生徒に抱かれながら天上界へ旅立つ場面なのだけど、
その描写がまるで、にこにこ笑いながら眠っていったワンコを思い出させるものだったのだよ
(『 』「犬がいた季節」より)
『なあに、コーシロー。眠いの?笑っているみたい』
という女生徒の頬をコーシローはひと舐めし、目を閉じ、
そうして、思う
『ありがとう、大好きなあなた。次の一生もその次も』
『ずっとあなたたちと、いたいです』
ねぇワンコ
笑いながら眠っていったワンコの姿は、私の人生観を大きく変えるものだったんだよ
あのワンコの笑顔を思い出させる場面にある『大好きなあなた、次の一生もその次も』『ずっとあなたたちと、いたいです』の言葉
ワンコからのメッセージだと信じて、
ワンコに会える日を待ち続けているね
Mr.Children 「Tomorrow never knows」 MUSIC VIDEO
ところでさ、本書では何曲かの歌が効果的に用いられてるのだけど、
そのうちの一つのタイトルが、印象に残ったんだ
「Tomorrow never knows」(作詞作曲・桜井和寿 唄Mr・Children)
要領よく効率よく生きることを第一に志望校を定めた生徒が、
センター試験直後に起こった阪神淡路大震災で何もかも失った祖母と暮らすことになる
孫が聴く曲のタイトルの意味『明日のことは分からない』に意気消沈する祖母を見て、
ただ要領よく生きるだけでいいのか迷い始める
そして、
せっかく合格した大学に進学せずに、医師を目指すために学びなおすことを、コーシローに報告する
『真っ白な犬の背を撫ぜ、奈津子はその手を朝日にかざす。
明日がどうなるか、誰にもわからない。だから必死に学んで、これからこの手を変える。
生きている者のぬくもりを守る手に。
明日の行方は、この手でつかむのだ』
若者は、こうでなくっちゃね
で、独り言なんだけどね
本書にはワンコからのメッセージもあるし、
どこかに私自身も潜んでいそうで、懐かしさもあるのだけれど、
本書の登場人物たちと同世代の君のことが少し気になるよ
11月に帰省した時、一回り小さく見えるほど痩せ、表情も暗かったから、
隔週でしかない対面授業のために、一人下宿生活を続けることを心配したのだけれど、
今回帰ってくると、トレードマークの眼鏡をコンタクトに変え、爪にはマニュキュアをしているから、
進振りならぬ一大転換を遂げたのかと、ちょっと心配になり尋ねた私に、
君は笑いながら「コンタクトは、野球のときにサングラスをかけるから。マニュキュアは投球の時に爪に圧力が加わりひび割れるのを避けるため」と答えたね
それはそれでいいのだけれど、
明るい表情が戻っていることも、
受験勉強で落ちていた筋力が傍目にも分かるほど戻りつつあることも、
安心し嬉しいのだけれど、
なんだろうな
自信に満ち溢れた姿に、不安を感じるんだな
全方向弱点がない、それがいつか君の弱点にならないかと
そんな不安を抱えながら本書を再び手に取ると、目に飛び込んできた一文があるんだよ
『迷った時に戻る場所』
本書の生徒にとっての『迷った時に戻る場所』は、コーシローと過ごした高校なのだけど、
君にとっては・・・
迷い立ち止まることがないよう祈っているけれど、
もし君が迷った時には、戻りたいと思える場所でありたい(あらねば)と思わせる
絶対的安定感が不安定な、君なんだよ