何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

受け入れること、進むこと

2020-02-23 01:01:01 | ニュース
2月23日は語呂合わせから富士山の日とされているが、この日が日本一の日と言われるのは、その高さ故だけではなく、天皇陛下の御誕生日でもあるからだ。

 
天皇陛下 お誕生日おめでとうございます
 
御即位後初のお誕生日であり還暦のお祝いでもあったので、多くの人が駆けつけると思われた一般参賀は、新型コロナウィルスの被害拡大を受け、早々に中止が発表された。
おそらくそれは、両陛下のお気持ちを反映してのことに違いないが、国民の健康を慮ってだの関係各所の対応に配慮してだのというアッピールは一切されず、早い段階でさらりと発表され、それが他のイベントや行事の中止延期の良いモデルとなっているところに、令和流を感じている。
水の研究者として災害と復興に詳しい天皇陛下と、ハーバード大学経済学部をトップクラス(三番以内でマグナクムラウデ受賞)で卒業された皇后陛下は、地球規模での気候変動や地殻変動による災害や、来たるべき経済危機も見越しておられるに違いないが、歴史学者でもあられる天皇陛下が、幾多の災いから必ず立ちあがってきた我が国の国民を信頼されておられることは、多くの講演や著書から拝察できるし、オイルショックを卒業論文で取り上げられた皇后陛下は、その後我が国が「Japan as No1」と云われるまでに成長した経緯を勿論ご存じだ。
 
だからこそ、どれほど困難な見通しがあるとしても、令和初の歌会始で、若者に明るい未来を期待する歌を、そろって詠われたのだと思う。(令和2年 歌会始お題「望」より)
 
天皇陛下
学舎(まなびや)に ひびかふ子らの弾む声 さやけくあれと ひたすら望む
 
皇后陛下
災ひより 立ち上がらむと する人に 若きらの力 希望もたらす
 
もちろん新しい時代に、未来を担う若者に期待を寄せられた歌は素晴らしいが、令和初の歌会始の儀には、新しい時代と両陛下を寿ぐ歌がふさわしい。
 
正仁親王妃華子殿下
 ご即位の儀式に望み いにしへの装ひまとひ背なを正せり
 
 寬仁親王妃信子殿下 
 雪襞 (ゆきひだ) をさやかに望む富士愛 でて 平和な御代の はじまりにあふ
 
 
富士山の日 日本一の日に誕生された天皇陛下の新しい御代を寿ぐ素晴らしい歌が詠われた令和2年の歌会始の儀だが、数ある皇室の儀式の中でも、私は歌会始の儀が好きだ。
万葉集がそうであるように、歌会始の儀でも、皇室の方々の歌だけでなく、広く国民から募った歌も披露される。
平穏な御代を祈るが、どのような時代になっても、詠う心を持ち続ける国であってほしい。
歌会始の儀式の真ん中に、徳仁天皇陛下と雅子皇后陛下がいらっしゃる時代が長く続いてほしいと心から願っている。
 
天皇陛下 お誕生日おめでとうございます
 
  
     
 
5月1日御即位の日から日を置かない頃、仕事で出かけた京都の駅で購入した、聖護院八つ橋。
5月の舗装紙に梅が描かれているのは、令和の出典となったのが万葉集「梅花の歌」だからだ。
その件は、梅を題材として歌を詠むなど、時代や階級を超えて文化交流しようという意味が込められていたと記憶している。
 
そんな時代を願いつつも、いくつになっても私は、花より団子、歌より団子のような気がしている。

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閑話休題① 誤使用も茹でガエルが皆で使えば罷り通る

2020-02-17 12:00:00 | ニュース
「泥をかぶった りんごたち①」の続きを書くべきだが、ニュースは生ものなので、こちらを先に。
 
新型コロナウィルスが猛威?を振るっている。
強毒かと言われれば、そうではないかもしれないが、どうも感染力はかなり強いようで、当初の予測を裏切り被害は拡大し続け、それに伴い茹でガエルの国民は兎も角も、海外が日本の対応に怒り始めた。
 
<「浮かぶ監獄」海外メディアがクルーズ船乗客の発信を紹介> 産経新聞2020.2.7 17:39より引用
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で確認された新型コロナウイルスの集団感染には海外メディアも高い関心を寄せている。
「豪華なクルーズじゃない。まるで『浮かぶ監獄』だ」。仏国際ニュース専門テレビ局フランス24などは6日、乗客の英国人男性がSNSで発信した言葉を紹介した。
英BBCも、乗客らのSNSへの投稿を基に、船内の様子を報じた。デッキに出る際は「マスクを着用し、他人との間隔を1メートルは空けてグループで集まってはならない」などのルールがあることや、「服は繰り返し着なくてはならず、下着はせっけんで手洗いしている」といった生活ぶりを伝えている。
米CNNは「(船内では)地上よりも急速に感染が広がるとみられる」とする専門家の見解を紹介したほか、新婚旅行のためにクルーズ船に乗っていた米国人女性にも取材。女性は「安全とは感じられていない。すでに感染しているクルーズ船ではなく、消毒された安全な環境で隔離されるべきだ」とした上で、「トランプ大統領、助けて」と訴えた。
(引用終わり)
 
新型ウイルスや災害によるパンデミックものは近年多く出版されており、災害パンデミックの先駆者として名を成された高嶋哲夫氏にも致死率六〇%の強毒性インフルエンザを描いた「首都感染」がある。高嶋氏の作品は日本原子力研究開発機構の研究員であった経歴を生かした作品や災害パンデミックものが、恐ろしいまでの先見の明を感じさせ、又 理系作家さん特有の理路整然とした筆致が臨場感を醸し出し、非常に読みごたえがあるので、新作がでれば必ず読む作家さんである。だが、(どのような官僚と政治家を御存知なのか知らないが)高嶋氏の作品は、どれほど危機的な状況であろうと、すっばらしい官僚や政治家の大活躍で絶体絶命の危機は回避され、世界中からその対応が称賛されて物語が終わる、というお決まりがあるので、その一点で現実味が薄れてしまうという難点がある。

そんなことを思い出させる現状に、先月読んだ本を思い出していた。

「サリエルの命題」(楡周平)

同じく新型ウィルスのよるパンデミックを描いてはいるものの、こちらには、正義のヒーローは登場しない。

本の帯
(表の帯より)少子化は正しい。問題は長寿だ。突然発生した新型インフルエンザで、離島の住民が瞬く間に全員死亡。そしてとうとう本州にも感染者が。頼みの治療薬の備蓄が尽きる時……。助かる命に限りがあるなら、将来ある者を優先せよ。
(裏の帯より)悪魔のウイルスの名は「サリエル」。医療に通じ、癒す者とされる一方で、一瞥で相手を死に至らしめる強大な魔力、『邪視』の力を持つ堕天使――。
日本海に浮かぶ孤島で強毒性の新型インフルエンザが発生し、瞬く間に島民全員が死亡した。それはアメリカの極秘の研究データが流出して人工的に作られたという疑いが。テロの可能性が囁かれるうちに、本州でさらに変異したウイルスの罹患者が現れる。ワクチンもなく、副作用が懸念される治療薬が政府の判断で緊急製造されるが、感染が拡大しても全国民にはとうてい行き渡らない。刻々と事態が変化していくなか、果たしてパンデミックは回避できるのか?

そもそも本書で「サリエル」と名付けられたウィルスは、自然発生ではなく、人為的に作られたもので、しかも復讐を目的にばら撒かれたところからして、通常のパンデミックものとは異なるし、政治家や官僚たちが、正義のヒーローぶりながら、あるいは正論を振りかざしながら、結局我が身のことしか考えていない醜さを描いている分、悲しい説得力がある。

この手の話に魂を揺さぶられるような名言というのは見つけにくい事や、本書と同時期に読んだ本が(本書も含めて)暗澹たる日本の未来を予測しているので、年明け早々ブログに書くのが躊躇われたのだが、本書がオリンピック開催を間近に控えて浮かれている日本を襲った新型インフルエンザの話だったので、記録しておこうと思った次第である。

来たるべき人口減社会こそが日本を崩壊させるという危機感をもつ楡氏らしく、本書を通じて著者が訴えたかったことが、「人口減を抑えるために、(ワクチン接種や治療など)優先させる命の順番を考えよ」「限りある資源(人もの金)を優先的に若者に投資せよ」であることは明白なのだが、同時期に読んだ本数冊がすべて同様のことを訴えているので、新年早々考え込んでしまい、感想を書くことができなかったという事情もある。

それについては、又つづく?かもしれない。

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泥をかぶった りんごたち①

2020-02-11 23:42:35 | 
シンクロニシティというわけではないが、10日ネットにあがっていた記事で、最近読んだ二冊の本を思い出した。
そもそもその本を読んだのも、シンクロニシティというほどではないが、傷アリりんごの話から神戸の少年事件を思いだしたことが、きっかけだったのだ。
 
それは、知人が地方の道の駅で、傷ありりんご一盛りを嘘のように安い値段で買ったという話だった。
少しキズがあるだけで商品価値がなくなってしまった美味しいりんごに、知人は「これが人間なら、私も商品価値がない部類になってしまう」と感じたという。その話から、日本中を震撼させた、あの事件の加害少年が書いたということで、当時世間を賑わせた作文を思い出したのだ。
たしか ー 本物の花や果物は、キズもあり不完全なものなのに、いつのまにかショーケースに並べられた蝋で作った果物や花の姿を完璧・本物だと思うようになり、我々は果物や花はこうでなければならないと思い込んでしまっている ー という内容だったと思う。
 
こんなものを新聞社だか警察だかに送り付けたりしたので、犯罪心理学者とやらは訳知り顔で、犯人はおそらく高学歴の中年だろう、などと予測していたのだが、蓋を開けてみれば、中3になったばかりの男子生徒だったので、日本中が震撼したのだ。

知人との話題であの事件を思い出したところで目に付いたのが、この本だった。

「Aではない君と」(薬丸岳)

本の帯にはひと際大きな文字で「殺してないと言ってくれ」と書かれている。
本の帯より
『殺してないと言ってくれ
 自分の子が’’少年A’’になった。弁護士には何も話さない。
 苦悶する男が選んだのは「付添人」という道だった。
 子供が罪を犯した時、
 親にできることは何か。
 勤務中の吉永のもとに警察がやってきた。
 元妻が引き取った息子の翼が死体遺  棄容疑で逮捕されたという。
 しかし翼は弁護士には何も話さない。
 吉永は少法十条 に保護者自らが弁護士に代わって話を聞ける「付添人制度」があることを知る。
 生活がこんらんを極める中真相を探る吉永に、刻一刻と少年審判の日が迫る。』
 
やりがいあるプロジェクトを任されることが決まった高揚感と、そんなところに警察から連絡が入った緊張感から本書は始まるため、あっという間に本書の世界に引き込まれるのだが、おそらくそれは、こんな経験だけはしたくないと誰もが思う世界だ。
凶悪犯罪が起きると、犯人の親の顔が見てみたい、という声が聞かれるが、加害者の親を疑似体験することになる本書を読むと、そんな思いは吹き飛んでしまい、一瞬にして加害者の親になってしまった主人公とともにオロオロしなが読み進めると、親たるものの心構えらしき言葉が見つかる。(『 』「Aではない君と」より)
 
『物事の良し悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ』

しかし、この言葉を胸に刻んでも、加害少年の疑問に親も読者も容易に答えを見つけることはできない。
 
加害者は動物好きな優しい少年だったのだが、被害者少年による巧妙なイジメに遭い、大好きな動物を殺すことを強要され続けていた。
動物を殺すことに耐え切れなくなった少年の犯行。

加害者少年は父に、『どうして動物を殺すことは許されるのに、人を殺すことは許されないの?』『(動物を殺すことを強要されて)僕はあいつに心を殺されたんだ。それでもあいつを殺しちゃいけなかったの?』と問う。

『心を殺すのは許されるのにどうして体を殺しちゃいけないの?』
『心と体と、どっちを殺した方が悪いの?』

キズあり訳ありりんごが、きれいなリンゴを物色している大人に問いかけている。
 
本書を思い出させた記事と、それにより思い出した、もう一冊の本については、又つづく

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永遠の今のワンコ ③

2020-02-05 09:50:51 | 
ワンコが天上界の住犬になって、ちょうど4年目のお告げの本のタイトルが、とっても寂しいものだったから、
だから感想文が書きにくかった、ということもあるけれど、
一月後半、私はぶっ倒れていたんだよ
 
なぜか二月か三月に一度盛大に倒れるのが、近年 恒例となっているのだけれど、
自分でもこれはマズイと思うほどのオーバーワークだったせいか、今年のそれは早く、一月の最終週三日ほどぶっ倒れていた

こうでもならない限りゆっくり寝ることが難しかったことを思うと、仕方がないけれど、
ひとたび休むと、疲れが滾々と湧き出てくるので、質が悪い
そんな一月最終週の週末、図書館に予約していた本が数冊まとめて入ってきたので、
ワンコお告げの本については、さりげなくスルーして、そちらの感想を書こうかと思ってしまったよ
それくらいワンコお告げの本のタイトルと、そこにあった言葉にショックを受けたんだよ

「さよならの儀式」(宮部みゆき)

これは、作者宮部氏によると「初めてのSF作品集」らしいのだよ
宮部氏というと、「蒲生亭事件」「この世の春」などを筆頭にSFのような作品が多いという印象があるけれど、
本作は、それらしきものを集めた作品集ということが、初めての試みのようなんだ

特別養子縁組を深化?進化?させたようなマザー法が親子のあり方の問題を炙り出す「母の法律」や、
老人の生きがいを問う「戦闘員」などの短編で始まる本書だけれど、

本書のタイトルとなった「さよならの儀式」にあった言葉は、
それがワンコからの四年目のメッセージかと思うと、胸が痛んだんだよ
心臓が鷲摑みされたくらい胸が痛んだんだよ
 
「さよならの儀式」はね
身近な作業は何でもロボットがしてくれる近未来を描いたものなのだけど、
そんな時代でも、人は感情をうしなっておらず、壊れたロボットに愛着をもっていて離れがたいと感じるんだよ
古い型、壊れたロボットは危険なので、新しいものと交換しなければならないという法律があるのだけれど、
かわいがってきたロボットと離れがたい人々が、廃棄を担当する窓口で名残を惜しむ場面が描かれているんだよ
 
窓口担当者に、なんとか直らないか(治らないか)と切々と訴える主人公に、
ロボットが最後に語り掛けるんだよ
 
「帰りなさい」
「わたしを、死なせて、ください」

この言葉を読んだ時、
ワンコ
四年たってもワンコを想わない日は一日としてない私は、胸が塞がれる思いがしたよ

よく人間界だと、いつまでもメソメソしていると故人が成仏できない、なんて言葉があるけれど、
ワンコも困り果てているのかな?
でも、ワンコも知っているだろう
たしかにワンコを想わない日はないけれど、
それは、
ワンコと過ごして楽しかったこと嬉しかったこと可笑しかったことを想う、とても和やかな時間なんだと
だから、
絶縁、みたいな「さよなら」を迫らないでね ワンコ
 
でも、ワンコが、そんなつもりじゃないことは、
ワンコお告げの歌でも分かったよ
本書を読んで少し呆然として、「さよならの」と打とうとすると、
こんな歌が流れてきたからね
 
 
’’星’’のことからはじめる歌詞だから、本当にワンコからのお告げの歌に思えたよ
ワンコが約束の星を通じて、弱り目な私に贈ってくれたんだと思えたよ
 
そうして落ち着いて本書を読むと、今度は違う言葉が心に入ってきたんだよ
 
それは、「わたしとワタシ」という短編なんだよ
久しぶりに実家を訪ねたわたしは、母校の制服をきている女子高生に会う、というお話で、
宮部氏らしい、三十年前のワタシと現在のわたしが色々いろいろ本音をぶつけ合う、というものなんだよ
 
仕事も私生活もパッとしない、女子高生からすれば「干からびちゃってる」みたいなわたしが、
30年前のワタシに、「これがわたし。でも、わたしは今のわたしがけっこう好き」と言う場面にハッとしたんだよ
 
ねぇワンコ
わたしもさ、他の誰でもないワタシに、今のわたしがけっこう好き、だといえるように生きたいと思うよ、
そう生きるのに手遅れってことは、まだないよね ワンコ
そんな、今のわたしの年齢に合う前向きな方向性を示してくれたワンコに
感謝だよ
 
Thank you for your everything さよならのかわりに!

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