小説『言の葉の庭』
アニメーション監督:新海誠の映画『言の葉の庭』の小説版。
靴職人を志す高校生の孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野の孤非(恋)の物語。
ふつう小説とかコミックなど原作本があって映画化されるが、
これは映画が先で、後から小説として出版された。
映画では、孝雄と雪野ふたりの視線で描かれていたが、
小説では主人公・孝雄の兄や母との関係や雪野がなぜ心の病になったなど、
映画では描かれなっかた内容を10話にして物語れている。
映画を観てものすごく感動してしまった。
だからブックオフでこの本を見つけた時、おもわず衝動買いをしてしまった。
映画を観た方は分かると思うが、この物語には下敷きになっているものがある。
「万葉集」である。
雨の日の午前中、新宿御苑のベンチで二人は出会う。
そこで雪野は孝雄に言う。
「雷神の しまし響もし さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」
なるかみの しましとよもし さしくもり あめもふらぬか きみをとどめむ
訳:雷が ちょっとだけ鳴って 突然曇って 雨でも降らないかな あなたを留めたい
帰ってしまいそうな男性をひきとどめたい女性の歌。
雨は、男性が帰ることの妨げとなるので、突然降ってきてくれないかなと願っている。
この歌に対する返歌。
「雷神の しまし響もし 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば」
なるかみの しましとよもし ふらずとも われはとどまらむ いもしとどめば
訳:雷が ちょっとだけ鳴って 雨なんか降らなくても わたしはここに留まるよ あなたが止めるのなら
雨を理由にひきとどめようとした女性に対して、あなたが願うのなら留まるという男性の歌。
雪野は孝雄が通う高校の古典の先生。
だが、心の病を患って休職中。
だから、孝雄は雪野先生のことは知らない。
雪野は孝雄に自分の存在のヒントとしてこの歌を口にしたのだろう。
僕はこれで少し万葉集に興味をもってしまった。
小説版は10話まであるから10の歌が紹介されている。
和歌って何かいいなぁと思ってしまう。
映画も良かったけど、小説版も感動してしまった。
こうして本を読むと再度、映画も観たくなってきてしまった。
『言の葉の庭』 予告篇 "The Garden of Words" Trailer
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