Now+here Man's Blog

Surf, Run and Trails / Endurance For Fun

国境の西、太陽の南

2007-07-26 07:54:54 | ThinkAbout..
『R’s Bar』の共同出資者となった僕は順調に利益を上げ、
ついに都内に新しい店を出すことができた。

個人事業の多くの講習会に出かけ、素人ながら着実に知識を得た。
彼女は7割、僕は3割の経常利益を得るよう専属の会計士を雇用し、
順調にしかもあっという間に利益を得ることができるようになった。

とどのつまり、行動するか否かの選択の余地はなく、
当然のように、流れに乗って、ということだ。

彼女の才能を見出した僕は、その能力の開花すべき方向を示すべく、
毎夜語り合い、そして全ての仕事は全ての方法において普遍という理念を持って
着実に堅実にしかも全速力で走った。

R’sは青山3丁目の商業地の一角のビルの地下にオープンすることができた。
店長は遠く僕の故郷から呼び、彼の彼女と経営責任を持たせ、収入を歩合制にした。

僕はそのR’s 2nd LOFTのそばにマンションを購入した。
税対策を行うためと、本業の会社の東京支店のコントロールのためだ。

目まぐるしく過ぎ行く日々は案外心地よく、
湘南の風や波も、生活のアクセントとなったことには間違いない。

時折、店の状況を確認しに行き、客層や店内の様子をチェックし、
それをメモにとり、彼女と話し合い、いい結論を導き出す。


今朝、青山から静岡へ向かう。
会社のちょっとした戦略会議に参加するためだ。

いつも向かう御前崎への道は、以前とははっきり違っていた。
梅雨明けしたかどうか微妙な空の下、厚木を通り、御殿場を抜ける。

BMWのカーオーディオからはジョン・コルトレーンの『国境の西、太陽の南』がかかる。


『そしてある日、あなたの中で何かが死んでしまうの』
前の晩に彼女が僕に言ったことを思い出した。

『水平線から上がって、中空を通り過ぎて、西の山に沈んでいく太陽をしっているでしょ?』
僕は中空を通り過ぎる太陽を、烏帽子岩の上を通り過ぎる太陽を思い出した。

『その太陽を毎日毎日繰り返し見ているうちに、
あなたの中で何かがプツンと切れて死んでしまうの。
わかるでしょ?』
『うん、なんとなく』
『それが、ヒステリア・シベリアナ』

僕は大地に突っ伏して死んでいくシベリアの農夫の姿を思い浮かべた。