グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

続・食料自給率にも多様性があっていい。

2011-08-15 22:05:19 | Weblog
続・食料自給率にも多様性があっていい。


農作物には、土地利用型作物と労働集約型作物があり、その作物を使った
土地利用型作物農業と労働集約型農業があることを、ご説明しました。
そのうえで、最近なにかと話題となることが多い日本の食料自給率の表し
方を取り上げ、カロリーや生産額や、さらに重量で表した自給率もあった
たほうがベターだ
と述べました。そして本日は、続編となります。


 大型船入港.jpg まずは、農業新聞のトップを飾ったこの写真です。

7月12日の『飼料詰み大型船入港』と言う見出しのついた日本農業
新聞の第一面のトップ記事に使われた写真となります。

この記事のおおまかな内容ですが・・・『津波により甚大な被害を受けた
宮城県石巻港に11日、震災後初となる大型外航船が到着した。石巻市は
東北地方の飼料380万トンの3割を占める飼料基地。大型船での仕入れ
が再開したことで、安定的な飼料供給体制が整った
』と、いうものです。

東北地方は有数の畜産基地ですからね。この日に入港した5万トン級の大
型貨物船で運ばれた米国産トウモロコシ2万5000トンは、飼われてい
家畜への安定的な飼料供給に対して大いに役にたったはずです。ちなみに
今後は震災前と同様に、〔トウモロコシだけでも〕1ケ月に一回の割合で
このような大型船による輸送
が行われることになります。

いやー、よかったですね。と、ここまでは新聞による単なるニュース。
これから先を考えるのが、現場に居るものとしての つとめです。

そうなんです。理解されている方も多いとは思いますが、有数の畜産基地
である東北の家畜の餌もまた、ほとんどは外国産
なのです。この事実が、

 カロリベースや重量ベースの自給率が必要な理由

となります。

そして飼料ならまだまし。 大弾幕.jpg

この写真の、横断幕をもって入港を歓迎する方々が、日本人の食料に関係
する人々であったとしたら、どうでしょう。今回ご紹介した『飼料詰み大
型船入港』の飼料を食料という言葉に置き換えたとしたら
、どうでしょう。

脅かすわけではありませんが、おりしも本日は、終戦記念日。幾多の農業
の先輩たちから、終戦前後のイネの収量は悲惨といってもよいほどだった
という言葉を、〔わたくしは〕何度も職場で聞かされてきたのです。

その言葉を思い出しながら、この新聞記事を眺めると、どうしても飼料が
食料という言葉に見えてしまうのです。

◎ そして参考資料〔時事通信 4月30日〕
 岩手の養鶏農家も大打撃=えさ不足で大量殺処分―生産高国内3位
 東日本大震災は、津波被害を免れた岩手県の養鶏農家にも大きな打撃を
 与えた。地震に伴う停電や津波で、飼料工場などが操業停止に陥り、農
 家は弱ったニワトリを大量に殺処分。同県の鶏肉生産高は国内3位で、
 高病原性鳥インフルエンザ問題に揺れる日本の鶏肉産業にとっても痛手
 となった。
 陸前高田市の高台で「タカハシファーム」を運営するTさん。生まれた
 ばかりのひよこを仕入れ、60日程度かけて育てた後、大船渡市の食肉メ
 ーカーに出荷していた。「子供たちが安心して食べられるものをつくり
 たい」と、抗生物質を使わずに育てたニワトリが自慢だった。
 津波で市役所などが流された市中心部とは違い、5万羽を飼っていた養
 鶏場に大きな被害はなかった。だが、宮城県石巻市や青森県八戸市など
 沿岸部にある飼料工場が被災して、えさが入手できなくなった上、出荷
 先のメーカーの工場も停止。1週間は様子を見たが、えさ不足で弱った
 ニワトリは病気にかかりやすいため、全て処分して埋めた。ひよこの購
 入代や飼育に使ったえさ代など、被害は2000万円に上る。岩手県畜産
 課によると、震災の影響で養鶏農家のニワトリは4月下旬までに約270
 万羽が死んだという。 


▼ ほめ殺しという言葉。“日本農業は強い論”を聞かされると、
  わたくしは、このほめ殺しという言葉を連想してしまいます。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染









日本の集落にはいろいろな農家と農業がある。

2011-08-15 15:46:50 | Weblog
日本の集落にはいろいろな農家と農業がある。改良要記録

続・食料自給率にも多様性があっていい。の回の参考として、以前掲載したもの
の再録となります。よろしかったら。

  ↓

野菜や果樹などを栽培する労働集約型の農家は、土地をあまり必要とし
ません。
むしろ労働力の限界を感じつつも、無理を押してイネを作付けしなければならな
いときすらあります〔作付けしないで田を荒らすとまわりの農業者からのクレー
ムが来る場合の対策として〕。
このように、もっている土地が余ってしまう場面もあるわけです。

ですから、このあまっている水稲を作付けする水田について、土地利用
型農業を目指す農業者に貸し出したり作業委託を頼む場面
があります。

反対にイネやムギ、大豆を栽培する土地利用型単独農家では大規模な
土地が必要になります。。
たとえばイネの場合でいえば、1haほどの農地では農業所得は生じず、5ha
以上でなんとか経営的にとんとん、10ha以上の農地を確保して初めて
農業所得が500万円程度
になるともいわれています。。

そこで労働集約型の農家が、土地利用型単独農家に土地を貸す場面が
でてくる
わけです。これでどちらとも経営がうまくまわる。

いっぽう、労働集約型の農家というほどでもなく、土地利用型単独農家
でもない、中間型というべき農家もいます。
たとえば水稲の時期にはイネを作り、水稲が終わるとキャベツや野菜な
どの葉物野菜や小面積のハウス栽培で野菜をつくったりする農家です。

もちろんこれでも経営がなりたちます。

また、1haほどの土地を持ち、〔自分のウチが食べる分+α程度の〕野菜
や米の作付けだけをする程度の兼業農家もいます。また年金収
入が主たる収入源で、あまった農産物をすこしだけ販売する農家もいます。
これらもまた経営がまわっている農家であるわけです。

そうそう、ほかにもありました。

たとえば 畜産だけをおこなう農家もありまし、なかには不動産屋さんの
ような農家、まるで企業家のような農家もいます/笑。

と、このように、ひとつの集落には、いろいろな 農家と農業がある
わけです。

そして・・・ここがポイントなのですが、くくりでいえば、

 全部が『農家』ですし、おこなってるのは『農業』

であるわけです。

そこで 昨今論議が盛んになっている〔日本には土地利用型農業しかない
と思わずをえないような
農業改革論 です。

農業改革を語るのであれば、今回説明してきたような 日本の農家と農業の
実態を認識したうえで、どの農業と農家に対する農業改革論を語っているの
かを、まず最初に説明する必要がある
のではないでしょうか。

いろいろな農家と農業のある農業の問題を、ひとくくりにして語るには
無理がある・
・・と思うのです。


▼ 日本の企業だってそうですよね。大企業や中小企業、株式会社と個人商店、
それに外資やベンチャーなど、いろいろな会社全部をまとめて日本の企業です。
いっしょくたの 改造論って・・・ありますでしょうかね。


51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染