福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

パウル・クレツキのシューベルト

2016-11-16 17:28:58 | レコード、オーディオ


先週の水曜日、長岡へのお出掛け前に聴いた音楽。

シューベルト: 交響曲第7番「未完成」(ボクには未だ「未完成」=「8番」なのだが・・)&劇音楽「ロザムンデ」
クレツキ指揮ロイヤル・フィル レコード番号は英EMI ASD296

このシューベルトは深い。表面は淡々としているのに、冥界をさまようような、或いは死の淵をのぞき込むような瞬間がある。ナチスに両親や姉妹ら肉親を虐殺され、自らはナチスやスターリン政権の魔の手から逃げながら指揮活動をつづけたポーランドの生んだ孤高の巨人。

そんな前知識がなくても、この演奏から「死」を思わない者はあるまい。それほど、この美の裏側に横たわる闇は深い。

さて、このレコード。音質良好ながら、「未完成」の最後に痛恨のノイズあり。いずれ、買い直さなくては。

クレツキのベートーヴェンやマーラーも聴きたくなった。


ティボール・デ・マヒュラのドヴォルザーク: チェロ協奏曲

2016-11-16 09:24:15 | レコード、オーディオ


今朝はティボール・デ・マヒュラが独奏するドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴いた。モラルト指揮のモノーラル録音(蘭フィリップス・未入手)ではなく、アルトゥール・ローター指揮ベルリン交響楽団とのステレオ録音。独オペラ・レーベルである。録音年の記載はないが、1950年代後半から60年代前半であろう。紙ジャケットの左右2辺が接着剤によらず糸で縫われている。

ティボール・デ・マヒュラは、ベルリン・フィルとコンセルトヘボウ管の首席奏者を歴任した名手であり、フルトヴェングラー指揮のシューマンの協奏曲の名演奏によっても知られるが、派手さよりも実直さを追求する演奏姿勢は、どこか同じハンガリー出身のペレーニを連想させる。

演奏効果を狙う人ではないこともあり、ドヴォルザークの協奏曲ほど大きな作品になると、ややスケールの小ささを思わせるものの、チェロという楽器に殉じるような直向きで清々しい様子が録音からも伝わってくる。こういう邪念のない演奏を耳にすると、自分の心まで綺麗になったような錯覚に陥るから不思議なものである。否、錯覚ではあるまい。少なくとも、聴いている間だけは・・。

ところで、この古いレコード。最初に針を下ろしたときは、バチバチというひどい雑音で鑑賞に耐えうるものではなかったのだが、カートリッジをライラ・タイタンからフェーズテック・P-1に交換したところ、嘘のように静かな再生音となった。恐らく、溝に対する両者の針の当たりどころが異なるために起こった現象であろう。アナログ・レコードとその再生は本当に面白い。



追記 カップリングされたゲオルク・ルートヴィヒ・ヨッフム(オイゲンの弟)指揮のボロディン「中央アジアの草原にて」とグリンカ歌劇「皇帝に捧げた命」序曲が出色の名演。これは思わぬ拾い物でった。


サヴァリッシュ若き日の名盤2点

2016-11-13 12:52:44 | レコード、オーディオ


本来であれば、大阪フィル第503回定期に於けるシモーネ・ヤングさんの素晴らしさについて書くところであるが、久しぶりに帰宅したもので野暮用山積。

午後からの町田市合唱祭を控え、いまは手を休めて、わたしの中で評価が急上昇している若き日のサヴァリッシュのレコードを聴き、心をリフレッシュさせているところ。

30代から40代にかけてのサヴァリッシュは、学生時代にN響アワーで観た模範的なサヴァリッシュとは別人のような冴えと鋭さがあって、その狂気を孕んだ頭脳明晰さから産まれる音楽のアブノーマルさが溜まらない魅力となっているのだ。

今朝聴いた2枚は、当時の手兵ウィーン響とのものではなく、コンセルトヘボウ管を振ったものだが、これがまた良いのだ。未だメンゲルベルクの魂を宿しベイヌムの息吹を感じさせるコンセルトヘボウ管の鉄壁のアンサンブル能力と無限大の表現力によってサヴァリッシュの才能が伸びやかに羽ばたいているのだ。



曲は、ベートーヴェン「田園」とチャイコフスキー「5番」。
いずれも届いて間もないオランダ・フィリップスによるHI-Fi STEREOレーベル(オリジナル)によって聴いたが、この演奏の底力と奥行きの深さは、韓国プレスのCDからでは知ることのできないものである。

特にチャイコフスキー5番については、モントゥー、ムラヴィンスキー、マタチッチ、カラヤンと並ぶ愛聴盤の列に加わることになりそうだ。

では、そろそろ町田市民ホールへと出掛けるとするか。

旨いカレーとレコードクリーナー

2016-11-12 12:45:20 | レコード、オーディオ




シモーネ・ヤング&大阪フィル定期二日目を前にカレーで腹拵え。

キーマポークとチキンマサラの二種盛りにスパイス玉子乗せ。

旨い!

辛さの背後に様々な旨味が絶妙に広がる。カオススパイスダイナーというネーミングに勝負あり!

店名の名に恥じない味わい深さ。





さらには、愛用しているOYAGレコードクリーナーとOYAGクロスも調達できて、言うことなし。ネーミングといえば、マルかバツというこのレコードショップの店名も素敵だ。

腹も心も満たされたところで、いざ、フェスティバルホールへ。

本番前の高揚した気分でレコード屋にゆくと

2016-11-10 22:11:35 | レコード、オーディオ
こうなります・・。

斎藤秀雄メモリアルコンサート/小澤征爾・秋山和慶&桐朋学園斎藤秀雄メモリアルオーケストラ(フォンテック)


シベリウス「5番」/タクセン&デンマーク国立放送響(独デッカ)


フランク:交響曲二短調/バルビローリ&チェコ・フィル(捷スプラフォン)


シューベルト「4番」「未完成」/ジュリーニ&シカゴ響(独グラモフォン)


プロコフィエフ「5番」/カラヤン&ベルリン・フィル(独グラモフォン)


1984年ベルリン・コンツェルトハウス(旧シャウシュピールハウス)再開記念コンサート ベートーヴェン「5番」/ザンデルリンクほか(旧東独エテルナ)


ドヴォルザーク「7番」 /ビエロフラーヴェク&チェコ・フィル(英BBC)


ブラームス「3番」/ケンペ&ベルリン・フィル(英EMI)


ベルリオーズ「幻想交響曲」/ケンペ&ベルリン・フィル(英EMI)


ドヴォルザーク「新世界より」/クーベリック&チェコ・フィル(デンオン)


ブラームス「1番」/コンヴィチュニー&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管(旧東独エテルナ)


ニールセン「交響曲全集」/ブロムシュテット&デンマーク放送響(英EMI)


サン=サーンス「交響曲全集」/マルティノン&フランス国立放送響(英EMI)


ワーグナー管弦楽曲集/アンセルメ&スイス・ロマンド管(米ロンドン)


フランク「前奏曲集」/ベグネ,pf(仏フィリップス)


リムスキー=コルサコフ「シェエラザード」/クレツキ&フィルハーモニア管(英EMI)


ワーグナー管弦楽曲集/オーマンディ&フィラデルフィア管(米コロンビア)


メンデルスゾーン「5番」「真夏の夜の夢」組曲/パレー&デトロイト響(米マーキュリー)

ブラームス 交響曲&ピアノ協奏曲「2番」祭

2016-11-08 01:52:40 | レコード、オーディオ


間もなく、大阪フィルではシモーネ・ヤング(敬称略)を迎えてのブラームスの第2交響曲の演奏会ということで、昨日の午後は我がオーディオルームにてブラームス「2番」祭を催した。極めて私的な祭にて、聴衆はわたしひとり。

2番祭といっても、交響曲についてはサヴァリッシュ&ウィーン響のフィリップス録音のみ(ジャケットの美しさを見よ!)。残りは、ケントナー(pf) ボールト&フィルハーモニア管、アンダ(pf) フリッチャイ&ベルリン・フィルによるピアノ協奏曲第2番を聴いたささざ。

サヴァリッシュ&ウィーン響のブラームスはもう手放しに素晴らしい。ウィーンの馥郁とした情緒と理知的なサヴァリッシュの棒がぶつかっては妙なる化学変化を起こしているからだ。特に生きているのがバスのライン。常にバスを意味深く鳴らすことによってブラームスの設計した音の建築の意味がよく伝わってくる。整理されたアーティキュレーションやバランス感覚によりスコアが透けて見えるようでいながら、熱く燃える歌心やパッションにも事欠かない。
サヴァリッシュとウィーン響では、シューベルト「未完成」とメンデルスゾーン「イタリア」をカップリングしたアルバムも聴いたが、それも超弩級の快演であった。しばらくはサヴァリッシュへの注目がつづきそうである。



ケントナー独奏よる第2協奏曲は、フィルハーモニア管という最上のパートナーを得てのボールトの燻し銀の音楽づくりが光る。いかなる場面も慌てず騒がず、じっくりと構えては、気品溢れる演奏を繰り広げる。



一方、アンダ独奏の第1番は、特にフリッチャイが命懸けとも呼べる凄絶な指揮ぶり。かくも自らの命を火と燃やしたから、フリッチャイは早くにこの世を去ったのか? はたまた、命の限りを知っていたから、かくも激しく自らを燃やしたのだろうか・・。
アンダも力強く明晰なタッチで、フリッチャイともども高みに昇りゆく。まるで一期一会のライヴのような凄絶さをもって。

さあ、良い演奏に力を貰った。
今宵のマエストロによる合唱稽古への心の準備は万端だ。


追悼の音楽 ~ コチシュによるモーツァルト:ピアノ・ ソナタ集より

2016-11-08 00:31:26 | レコード、オーディオ

モーツァルト:ピアノ・ソナタ集 (第1番, 第3番, 第7番. 第10番, 第11番, 第14番, 第15番, 第17番, 第18番)

ゾルタン・コチシュを偲び、彼のモーツァルトのソナタ集(フンガロトン・レーベル)よりいくつかを聴いて眠ることにしよう。

デジュー・ラーンキとほぼ半分ずつ曲を分け合って全集を成すという趣向であり、コチシュの受け持ちは上記の9曲(したがって、ラーンキの受け持ちは第2番 - 第6番, 第8番, 第9番, 第12番, 第13番, 第16番の10曲)。

ボックスの写真の通り若き日の録音。1980年というから今から36年前、コチシュが28歳のときの記録ということになる。使用楽器は、スタインウェイのmodel B。コンサートグランドではなく、室内楽やサロン・コンサート向きの楽器で、モーツァルトには相応しいサイズといえるだろう。

今宵、針を落としたのは、4枚組(8面)のレコードのうち、第3~6面、即ち、第7番ハ長調K.307、第10番ハ長調K.330、第11番イ長調K.331「トルコ行進曲付き」、第14番ハ短調K.457、16番変ロ長調K.570、幻想曲ハ短調K.475の6作品である。

いずれも明晰かつ硬質なタッチによる名演で、歌心にも満ち、溢れ出る才能を止めようもないといった趣きが素敵だ。

並々ならぬ推進力とスコアの透けて見えるような透明性を獲得したパフォーマンスであるが、たとえば、ふたつのハ短調作品では、死の影を思わせる何かも秘められている。

これぞ、天賦の才能と呼ばずして何と呼ぼう。

ところで、ラーンキとコチシュでは個性が違うのは当然で、お互いに自らの欠番を補ったならば2つの全集が出来たはずなのだ。

そんなことを悔やんでも何にもならないので、いまは残された録音に感謝を捧げつつしみじみと味わうとしよう。

 


真夜中に聴くサヴァリッシュのブラームス

2016-11-05 01:51:03 | レコード、オーディオ


真夜中にサヴァリッシュ&ウィーン響のブラームス4番をオランダ・オリジナル・プレスのアナログ盤で聴く。1963年1月録音というからサヴァリッシュは40歳の誕生日を迎える手前。うーん、若い。

若い頃のサヴァリッシュは、本当に素晴らしい。もちろん、後年も良いのだけど、切れ味の良さが並ではないのだ。クナッパーツブッシュがバイロイトで「ブラヴォー!」と呼びかけただけのことはある。

あれだけ、N響に客演してくれていたのに、身近に感じ過ぎて一度も聴きに行かなかったことを悔やむ今日この頃。

これから暫く、サヴァリッシュの若い頃のレコード蒐集に明け暮れることとなりそうである。

しかし、このHI-Fi Stereoレーベル、再生音のピッチのやや高いのは気になるところ。もともとのウィーン響のピッチなのか、レコード化の過程でテープの回転数を上げたのか、後日ナクソス・ミュージック・ライブラリーに提供されているCD音源と比較してみるとしよう。

友よ、もっと狂え。「怪書探訪」古書山たかし著

2016-11-01 16:02:26 | レコード、オーディオ


きしめんを求めて西へ。
今日の旅の友はこれ。

「怪書探訪」古書山たかし著(東洋経済新報社)

古書山氏の文章は、幾万の読書量に比例して、知識と表現の引き出しが多い。奥が深く、ユーモアに富み、思考の回転が早く、またその趣味の変態性が人を呆れさせ、また惹きつける。

アナログ・レコード蒐集家のわたしを狂とするなら、古書蒐集家の著者もまた狂。ただし、わが狂が尖り、周囲の人々を傷つけ、我が身をも滅ぼさんとするとき、古書山氏の狂はどこまでも柔らかで微笑ましい。しかし、その優しさは仇とはならず、むしろ万人を幸せにする質のよい狂と言えよう。

しかし、いま、わたしは敢えて叫ぶ。

"友よ、狂え。
もっと激しく、己を焼き尽くすほどに!"

ラスト1日! ブルックナー8CD特別セール(写真追加)

2016-10-31 00:43:15 | レコード、オーディオ


ふと気が付けば、日付は10月31日。
福島章恭&愛知祝祭管のブルックナー8CD特別セールの最終日となりました。期間中はお騒がせし失礼致しました。あと1日のご辛抱、宜しくお願いします。

この度は、沢山のお申し込みを頂いたことに感謝致しております。CDが売れたことよりも、多くの方に知っていただけたこと、また、歓んで頂けたことをとても嬉しく思っております。

もちろん、ウィーン・フィルやベルリン・フィルとは同等には語れません。聴く方を選ぶCDには違いありませんが、他では聴くことのできないブルックナーであることは確かだと自負しております。

というわけで、今後の福島章恭にもご期待ください。再び、ブルックナーを振るための力を身につけるべく、精進を重ねて参ります。ご声援のほど、宜しくお願いします。



追伸・業務連絡
週末は発送業務ができませんでした。ご入会頂いた分については、本日31日(月)から11月1日(火)にかけて、手配致しますので、今しばらくお待ちください。