福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

とかなんとか言ったものの・・・

2016-03-29 00:40:02 | レコード、オーディオ

その後、マタチッチのベートーヴェンからは、「第5」および改めての「7番」全楽章を聴いた。

「第5」もいい。

遅めのテンポによって、ベートーヴェンの記したすべての音に命が吹き込まれ、極めて血の通った音楽となっているのだ。

音質も、1962年の放送録音ということでいえば、十分なクオリティだと思われる。

何より、マタチッチの燃え立つ火が、そのままの音に収められているのが良い。

「限定アナログ盤高額商法」とかなんとか言ってはみたものの、これほど良い演奏ならアナログ盤の音質も確認せねばなるまい。
 
辛いところである・・・。

 


マタチッチのベートーヴェン 1962年ミラノ・ライヴ

2016-03-27 10:23:36 | レコード、オーディオ

巨匠マタチッチの初のベートーヴェン交響曲全集~1962年ミラノ・ライヴ! - TOWER RECORDS ONLINE


購入したまま、留守がちのため未開封だったマタチッチのベートーヴェン交響曲全集。1962年ミラノに於けるライヴで、当然ながらモノーラル録音。

今朝、家族を駅まで車で送りがてら、「7番」の最初の二つの楽章を聴いたのだが、これには参った。

オーケストラのアンサンブルは乱れまくり、音質だって優れているワケはないのだが、ここに聴く魂を揺り動かす巨大なエネルギーはどうであろう。ドライブしながら聴くのは危険と思わせるだけの途轍もない波動に打ちのめされたのである。

ベートーヴェン「7番」は、マタチッチ最後の来日での2公演ともをNHKホールにて聴いているが、そのN響との録音を聴くときよりも、このミラノでのライヴを聴く方が、マタチッチの実演での五感に訴える感動に近いように感じた。

さて、気になるのは、このCDの音質が、我がメイン・システムでどの様に鳴ってくれるかだ。いまは外出先なのでその検証は後日とする。

なお、この全集は、例によって、アルトゥス・レーベルより限定アナログ盤(200組)としても発売された。音質的にCDよりも優位なことは予想されるが、47,520円(10枚組)という価格設定はいかにも高すぎる。少ないプレス枚数ゆえの単価の高騰は理解できるにしても・・。
キングインターナショナルの同一の購買層を狙った「限定アナログ盤高額商法」に、"そろそろついて行けない"という愛好家も少なくないのではないだろうか? 



かもっくすレーベルの聖地を詣る

2016-03-22 18:17:41 | レコード、オーディオ


1年2か月ぶりに両親の住む鹿児島を訪れております。

まずは、蒲生八幡神社を参拝です。
御神木は樹齢1500余年の日本一の大楠。蒲生の楠=かもっくす、というわけで、わがブルックナー「8番」、小沢さちさんの「平均律第1巻」のCDをリリースした「かもっくす」レーベルの聖地であります。



蒲生八幡神社の社務所には大楠を見下ろす、否、大楠に見下ろされるカフェがあり、父と2人、コーヒーを頂いてきました。



ここで、コーヒー・セットを注文すると茶請けのお菓子のほか、蒲生八幡神社の御守り付き。神社ならでは、実に有り難いことです。




ベーム&SKDの「フィデリオ」黒エテルナ未開封盤

2016-03-07 11:00:45 | レコード、オーディオ



留守中に溜まりに溜まった野暮用を片付けなければならないというのに、まずはレコード観賞からとのこと(なんという意志薄弱!)で、件のベルリンのレコード店Robert Hartwigで入手したものから、カール・ベーム指揮シュターツカペレ・ドレスデンによる「フィデリオ」(1969年)を聴いている。選んだカートリッジは先代光悦メノウだ。




この録音は勿論グラモフォンのレコードやCDでは聴いたことがあったけど、エテルナ盤だとまるで別の音楽に聴こえる。

今までは、どこか乾いた響に乏しい音だと感じていたのだが・・・。

これぞSKDという、なんと深い音色にライヴのように活き活きとした息遣い! これぞエテルナ・マジック!!

レコード蒐集家垂涎の旧東独エテルナの黒レーベル、しかも、未開封盤。 まるで缶詰めを開けたように47年前の音が最新録音のように目の前で鳴っている、という歓びこそは何ものにも代え難い。 

ライプツィヒでしこたまレコードを買っていたなら、ベルリンのお店を訪れることもなかったかも知れず、これもまた天のお導きと呼べるだろう。

因みに、この稀少な未開封盤も市場価格からみると破格の安値にてお譲り頂いた(具体的な金額は内緒)。
「ディーラーには適正な価格で売るけれど、君はアーティストだから特別だ」とのこと。

まこと、聖トーマス教会で指揮したということが、このバッハ好きの店主には水戸黄門の印籠のような絶大な効果を与えたようである。ありがたいことだ。

ベートーヴェン:歌劇『フィデリオ』全曲
ギネス・ジョーンズ(S)、ジェイムズ・キング(T)、エディット・マティス(S)、テオ・アダム(Bs)、マルッティ・タルヴェラ(Bs)、ペーター・シュライヤー(T)、フランツ・クラス(Bs)
カール・ベーム(指揮) ドレスデン国立歌劇場管弦楽団&合唱団 


ニコラウス・アーノンクールの死を悼む

2016-03-06 21:27:32 | レコード、オーディオ


本日の午後、ドイツ楽旅より帰宅。夜になってようやく荷を解き、ベルリン・フィルハーモニーの売店で購入したばかりのアーノンクールのシューベルト交響曲全集から「グレイト」を聴き始めたところに、ニコラウス・アーノンクール逝去の報が飛び込んできました。

アーノンクールのバッハやモーツァルトを始めて聴いた頃には、随分抵抗を覚えたものだが、いつしか、ベートーヴェン、ブルックナー、ブラームスに共感を覚え、ボクのなかでも重要な演奏家となりました。

音楽界に数々の問題提起をし、大きな影響を与えつづけたこと、また数々の名演奏で聴衆に幸せを与えてくれたことを讃えるとともに感謝したいと思います。

個人的には、ウィーンで「メサイア」「クリスマス・オラトリオ」、ミュンヘンでシューマン「楽園とペリ」の実演に触れることのできたことが、美しい思い出です。

合掌。


ベルリンのレコード店

2016-03-03 20:39:42 | レコード、オーディオ


Robert Hartwig - Berliner Musikantiquariat


今回のドイツ旅行では、故あってレコードを買わないことにしていたのだが、ベルリンの宿からU-Bahnで4駅、Deutsche Operの近くにクラシックを大量に在庫しているとうRobert Hartwigというお店があることを発見し、訪ねてみることにした。もちろん、レコードは買いたくない。あくまで、ベルリンのレコード文化を肌で知るための訪問である。



念のため、店に電話をしてから出掛けたのがよかった。お店はかなり大掛かりな改装工事中で、本来開いていないところ、店主のHartwigさんが、わざわざ待っていてくれたのである。



自己紹介代わりに、聖トーマス教会での「マタイ受難曲」公演のパンフレットをお見せすると、「凄い! 素晴らしい! まったく驚異的!」「おお、君はアントン・ブルックナーも振るのか!」とHartwigさんは大興奮。

と、大歓迎モードになったまでは良かったのだが、
「ご覧のとおり、いまは店舗が工事中で、思うようにレコードを見て貰えない。しかし、明朝10時に来てくれたら、エテルナ・レーベルの特別なコレクションを見せてあげよう」
などと言われてしまうと、"Nein Danke"と言える筈もない。

運の悪いことに(笑)、明日は夜の8時のヤンソンス&ベルリン・フィルの演奏会まで、まったく予定がないときている。というわけで、今日もなかなかのレコードを見つけたのだが、明日に備えて、まだ1枚も買わずにいったんホテルに戻ったところ。

店主Hartwigさんが言うに、このお店は作曲家ルイジ・ノーノも顧客だったとのこと。随分、ディープな店に来てしまったものだ。フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュ、シューリヒトらのポートレイトもあるとのことだが、それらも直ぐには出せないとのことで残念であった。

また、「いまは郵送の手配をしてあげられない」とのことで、仮に何枚か買った場合、自分で担いで帰るか、自分で郵便局を探さなくてはならないことも億劫ではある。



というわけで、ドレスデンの画廊につづき、ガイドブックにある観光名所巡りにはない感動と出会った次第。これぞ、旅の醍醐味と言えるだろう。

さて、明朝10時が楽しみのような怖いような・・・。


名ピアニストの遺品 ~ アンゲルブレシュトのペレアスとメリザンド

2016-01-15 01:01:54 | レコード、オーディオ


先日、「マタイ受難曲」合宿から帰宅するとパリより荷物が届いておりました。
アンゲルブレシュト指揮の「ベレアスとメリザンド」1963年ライヴ、シャルランによる限定200セット・プライヴェート盤。
演奏の素晴らしさは述べるまでもなく、これは驚異的なオーディオファイルです! 一生の宝物と呼べるでしょう。



ところで、レコードショップのオーナーによれば、このセットの前オーナーは、アンゲルブレシュトのアシスタントを務め、家族ぐるみで親交のあったピアニスト、オデット・ガルテンローブ(Odette Gartenlsub)女史(ガルテンラウプと表記されることもある)とのこと。まさに、「関係者のみに配られた」というこのレコードを持つに最も相応しい位置にいらしたのですね。2014年に亡くなっていることから、これはその遺品ということになります。このご縁を天に感謝します。

ガルテンローブ女史の演奏は、YouTubeでフロール・ヴァン女史の歌うドビュッシー歌曲のピアノを聴くことができます。
アンゲルブレシュトに愛されたピアニストだけに、なんとも美しく高雅な音楽性。彼女のレコードの悉くは稀少とのことですが、こちらにもご縁のあることを祈りたいと思います。


アンゲルブレシュトの「ペレアスとメリザンド」1963年ライヴ

2015-12-24 16:59:15 | レコード、オーディオ



長岡の「マタイ」レッスンより帰宅し、今日はアンゲルブレシュト指揮のドビュッシー「ペレアスとメリザンド」を聴いている。

これは1963年3月12日 シャンゼリゼ劇場でのライヴ録音で、1962年3月13日(ドビュッシー生誕100年記念公演)収録のディスクモンテーニュ盤とは別録音である。

決定的な違いはペレアス役。1962年のジャック・ジャンセンに対して、当1963年盤はカミーユ・モラーヌ。簡単に優劣をつけるべきでなく、それぞれを味わうべきだろう。いまは感想を述べないでおく。

音盤は仏バークレーによる3枚組で、当時としては立派なステレオ録音である。

一般的には、市販第1号のバークレー盤をもってオリジナルとしてもよいだろうが、厳密にはその前にシャルランによる限定200組のプライヴェート盤が存在する。

バークレー盤ですら優秀な音質であるのに、そのプライヴェート盤にはどれほど鮮度の高い音がその溝に刻まれていることだろう?

なお、アナログ盤ばかりを追いかけてうっかり見落としていたが、同じくカミーユ・モラーヌのペレアス役のふたつの録音がCDとしてリリースされているようだ。

ひとつは、1951年のフィルハーモニア管とのBBCによるスタジオ録音(英テスタメント)。もうひとつは、1952年のシャンゼリゼ劇場ライヴ(仏ラジオ・フランス・クラシック)。

特に前者、フランス放送管とは別の持ち味を持ったフィルハーモニア管による演奏は気になる存在だ。

ドビュッシー: 歌劇「ペレアスとメリザンド」

カミーユ・モラーヌ(ペレアス)
ミシュリーヌ・グランシェ(メリザンド)
マリー・ルーチェ・ベラリー(ジュヌヴィエーヴ)
フランソワーズ・オジュア(イニョンド)
ジャック・マルス(ゴロー)
アンドレ・ヴェシェール(アルケル)
ジャック・ヴィニュロン(医者)

アンゲルブレシュト指揮 フランス国立放送管弦楽団および合唱団

1963年3月12日 シャンゼリゼ劇場

 


針音の向こう側

2015-12-22 13:41:44 | レコード、オーディオ


「ペレアス」を聴いた後、先日心斎橋で出逢った「モーツァルト 伝説の録音」を摘まみ聴き。

内田光子は「針音は10秒で消える」と語っているが、中には「流石にここまで盛大だと聴き辛い」と思える復刻も混ざっている。宿命ゆえに仕方ないとはいえ、再生装置が本格的になるほどにそうなるのではないか? そんなとき、地下のリスニングルームの扉を開けたまま1階のリビングに上がって離れてみると、実に心懐かしい温かな音に聴こえたりする。

この針音や再生に伴うノイズというのは実に厄介で、SPそのものを聴く分には全く気にならないのないのだろうけど、その音がデジタル化されてしまうと少々耳に刺々しくなるのだ。

LPレコードを聴きながらですら、「ここに鳴っている音は素敵だけど、このまま板起こしにしたら耳障りだろうな」と思うことがある。針音の量の絶対的に違うSPなら尚更だろう。

もっとも、当セットの復刻を否定するつもりはまったくない。作り手の言うとおり、ノイズを除去することで、魂の抜かれてしまった例はいくらでもあるワケで、ここではノイズの向こうに演奏家たちの命の炎が灯っていることを尊ぶべきなのだ。ただ、もし自分が復刻者だったら、ここまで残す勇気はなかったかも知れない・・。

結論として、SPそのものを聴くのが最高ということなのだろうけれど、LPレコードだけで生活が壊れているところ、その禁断の世界に足を踏み入れることだけは思いとどまらねばならない。


ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」デゾミエール指揮 仏VSM FJLP盤

2015-12-22 10:40:09 | レコード、オーディオ



幻のレコード確保記念(現物を手に出来るのは年明け・・)に、今朝はその関連アイテムであるドビュッシー「ペレアスとメリザンド」のデゾミエール盤を聴いている。

ドビュッシー: 歌劇「ペレアスとメリザンド」

ペレアス: ジャック・ジャンセン メリザンド: イレーヌ・ジョアキム ゴロー: アンリ・エチェヴェリほか

ロジェ・デゾミエール指揮 交響楽団

仏VSM FJLP 5030/32



オリジナルはSPレコード20枚=40面(DB5161/80)に及ぶ、1941年ナチス占領下、ヴィシー政権時代のパリでの録音。

まさに、フランスの音楽家たちが威信を懸け、総力を挙げて完成させた大事業と呼べるものだろう。

このFJLP盤は1954年復刻の3枚組LPだが、フランスの香りと演奏家たちの誇りが一杯に詰まった音の記念碑で音質も奇跡的に豊穣である。

若い頃には、メリハリがなくて退屈に聴こえたドビュッシー唯一のオペラが、最近では胸の奥深くに染みる。

この陶酔的な美に一日中浸っていられたらどんなに幸せだろう。





このブックレットはそのSP初出時に附録されていた稀少品。恐らくはSP盤そのものが破損、または散逸してしまって、この印刷物だけが残されたのだろう。写真上が表紙で下が中扉である。

(スマホ撮影の写真のため、PCで観るにはサイズが大き過ぎますが、労力節約のためそのままで失礼します)