ミケランジェロ弦楽四重奏団のベートーヴェン・チクルス第3日目を聴いた。
今回の座席は、上手の最前列で、ちょうどヴィオラの今井信子の奏でる楽器の裏側を眺めながらの位置である。王子ホールは音響が素晴らしく、最前列の端でも良いバランスで聴けるのは嬉しい。
結論から言うと、初日に較べて違和感の程度は遥かに少なく、十分に楽しむことができた。
最前列で聴きながらより明確に分かったことは、第2ヴァイオリンのダニエル・アウストリッヒ、今井信子とチェロのフランス・ヘルメルソンが見事な室内楽を奏でていること。特に後二者のいぶし銀の味わいやバランス感覚は素晴らしい。一方、第1ヴァイオリンのミハエラ・マルティンだけが独奏者のように弾いてしまうのが玉に瑕。もっと瞑想的である場面でも、ヴィブラートをかけて歌いまくってしまうのは、特に晩年の作品の空気感を壊してしまう。彼女は上手い。実に立派に弾けているたけに、いまひとつの抑制のないのが悔やまれてならない。
いま、第2ヴァイオリン以下が室内楽を奏でていたと言ったけれど、いざ第2ヴァイオリンが単独でメロディを歌うときには、もっと音量も深い音色も欲しくなる。隣のマルティンが雄弁なほどに、その表現力の弱さと若さが目立ってしまうのも惜しい。
とはいえ、冒頭に書いたように、前回ほどの拒否感なしに、作品や演奏を楽しめたのは事実。そのどこまでが、演奏の違いなのか、座席による印象の違い(初日は1階のかなり後方席)なのかは定かではないけれど・・・。
ただし、王子ホールを埋めた満員の聴衆はほぼ例外なしに、盛大な拍手喝采を送っていた。上記、わたしのような聴き方は例外なのかも知れない。天邪鬼の自分が恨めしくもなる。
ミケランジェロ弦楽四重奏団
ミハエラ・マルティン(第1ヴァイオリン)
ダニエル・アウストリッヒ(第2ヴァイオリン)
今井信子(ヴィオラ)
フランス・ヘルメルソン(チェロ)
ベートーヴェン全曲演奏会(全6回)
<Vol.3>2/28
弦楽四重奏曲 第1番 ヘ長調 Op.18-1
弦楽四重奏曲 第11番 へ短調 Op.95 「セリオーソ」
弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.13
会場:王子ホール