発声や呼吸法を根本から見つめるという、日々の地道な営みが評価されたことは、まことに嬉しい限りです。
しかし、歓んでばかりもいられません。「関西で一番」などという小さなことには興味ないからです。目標は大阪フィル合唱団を世界に通用する合唱団とすること。たとえば、ベルリン・フィルやウィーン・フィルの来日公演にお呼びが掛かるような力を身に付けさせたい。
その点に於いて、大阪フィル合唱団にはまだまだ為すべきことがあります。声そのものの美は勿論のこと、脱日本語的な深い母音の獲得(それでいて、日本語を美しく歌う)、深い呼吸法に基づく悠久のフレーズ感覚、正しい和声感覚による豊かなハーモニーづくり・・、道のりはまだまだ遠く、しかも平坦ではないのです。
「カルミナ・ブラーナ」からバーンスタイン「ミサ曲」、そして、来年9月のライプツィヒ聖トーマス教会に於けるバッハ「ロ短調ミサ」に向け、大きな飛躍を遂げなくてはなりません。しかし、近道はなく、日々の営みの積み重ねてゆくしかないのです。
2017・4・29(土)飯守泰次郎指揮関西フィル「ミサ・ソレムニス」 - 東条碩夫のコンサート日記
【(前略) 結局、この数日の間に聴いた関西の3つの合唱団の演奏の中では、やはり大阪フィルハーモニー合唱団のそれが抜きん出ていたような気がする。
その一方で、ソロ歌手陣は見事な出来だった。特に女声2人は驚異的な素晴らしさで、澤畑恵美の優しさとふくよかさにあふれたソプラノと、池田香織の張りのある緊張感豊かなメゾ・ソプラノとは、合唱団の数倍も強い存在感を示し、輝かしく映えていた。指揮者を別とすれば、今日はこの2人で決まり━━と言っていいくらいだ。「アニュス・デイ」での池田のソロなど、圧巻だった。】