福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

躍動という言葉で追いつかない第九 2019/12/15

2019-12-15 19:11:08 | コーラス、オーケストラ
井上道義&大フィルによる「躍動の第九」@ザ・シンフォニーホール、無事に終演しました。

無事に・・と書いてから、間違っていることに気付く。今年の道義先生の「第九」は、躍動という形容では追いつくことのできないものであったこと。

前々日のコーラス稽古、そして、前日のオケ合わせ、マエストロの深化は明らかであったからだ。もともと、エネルギッシュで清新の気に溢れていたマエストロの第九だが、今回はテンポも少しゆったりとなり、行間に滋味の滲む真の巨匠の音楽となっていたのだ。とともに、そこに生み出されるエネルギーは絶大で、コーラスのメンバーには魂の解放と命の燃焼を求められる。

躍動という言葉では語りきれない所以であり、大フィル合唱団はマエストロが次々に繰り出すアクションに見事に応えてくれたと思う。

さらに、前日の稽古であれほど巨匠の味わいを作り上げながら、本番のステージでは自らそれをぶち壊す。それもまた、マエストロなのである。

終演後に気付いたことは、この第九が、本年唯一のマエストロとの共演であったということ。こんなことは珍しい。次の共演はいつになるのかなぁ?

とまれ、お互いを親友と認め合う井上道義先生と尾高忠明先生。それぞれに円熟の道を歩まれるお二人と、大フィル合唱団指揮者という立場でご一緒させて頂けることは、まことに幸いなことである。


最後にもうひとつの歓びは、ソプラノ高橋絵理さんとの再会。長岡混声合唱団のモツレクで素敵なソロを務めてくださった高橋絵理さんは、歌声、表現に益々磨きがかかっており、存在感を示してくださっていた。それがとても嬉しかった。

井上道義 躍動の第九

2019年12月15日(日) 14:00 開演

[指揮]井上道義
[管弦楽]大阪フィルハーモニー交響楽団
[合唱]大阪フィルハーモニー合唱団
[ソプラノ]髙橋絵理
[アルト]小川明子
[テノール]西村悟
[バリトン]デニス・ビシュニャ
アンダーソン:クリスマス・フェスティバル
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 「合唱付」 op.125
会場 ザ・シンフォニーホール