はじめて生演奏をく五嶋みどりである。
ヤルヴィ指揮NHK交響楽団定期。曲目は、ショスタコーヴィチの協奏曲第1番。
しかし、今日はまったく批評ができない。批評するほどには音が聴こえなかったからである。
座席は1階のやや後方、2階右サイド席に近いところ。
管打楽器とコントラバスの音はバンバンくるのに、ヴァイオリンからチェロの音が霞のようなのだ。
反響板の外に出ているパートは音が散ってしまうのではないだろうか?
当然、指揮台の横に立つ五嶋みどりの音もボリュームを絞ったラジオのように精気がない。
音が聴こえないゆえに、その尋常とは言えない身振りばかりが印象に残ってしまう。
感情移入と共に首がもげるのではないかというほどの角度に傾け、魔法使いの老婆のように腰を曲げたり身を縮めたり、激しい場面では全身を痙攣させながら両足を宙に浮かせたりする。
まるで、恐山のイタコをみるようで、気味が悪いのだ。
常識的には、集中するときに筋肉を縮めるのは効率が悪いし、視野も狭まるのでよくないと思うのだが・・・。
しかし、終演後の拍手喝采は凄まじいものであったし、ステージ上のN響メンバーからの賞賛の拍手も儀礼的なものとは感じられない。
また、2階席センター前方で聴いていたFB友は、「ピアニシモが素晴らしかった。オケもヤルヴィも完全に負けていた」と感想を述べられている。
芸の世界ばかりは、逆立ちして弾こうが、寝て弾こうが、結果が全て。
というわけで、その演奏する姿には感心しなかったが、肝心の演奏の良し悪しが分からなかったため、評価は保留としたい。
NHKホールには本当に困ったものだ。
1972年の開業以来、音が悪い、悪い、悪いと言われつづけて、音響改善のための措置も行われる気配もない、というのは怠慢ではないだろうか?
今後は、聴きたい演奏会でもよほど座席に恵まれない限りは、見送ることにしよう。