明鏡   

鏡のごとく

きのせい

2019-12-08 01:31:35 | 茅葺
庭師の人が
きの薬をぬっていた
太い枝を切り落とされた紅葉の木に
傷はことのほか大きく
薬の色もいよいよ濃くなって
樹血の滲んだようなどすぐろさ

きのかさぶたの下にある
傷をのみでほじくり返して
きの幹に穴を穿つ
その穴を年輪を作る速度で
なんか月もなんねんもかけて
塞いでいくのだ

最初から何も
なかったような
あったような
きのせいだと
幻肢痛を撫でさすりながら
口をすぼめてみせるような