明鏡   

鏡のごとく

鋏仕上げ

2021-02-09 00:07:44 | 詩小説
広島の三次の文化財の屋根を明石屋根工事さんとご一緒させていただき、仕上げ作業をさせていただいた。

多くの場合、九州の屋根においては突きものでたたき上げていくのであるが、今回は鋏で仕上げていった。

突きものの場合は、ある程度、カラスあるいはやっとこという茅や杉皮などを引っ張り出す道具で、引っ張り出して「なり」を整えることも、比較的、やりやすいと思われたが。

鋏仕上げの場合は、少しの鋏の入れ具合で徐々に勾配が変わっていき、カラスで引っ張り出したとしても、切り口がすでに鋭角になっているため、どこかちぐはぐになって、面が逆に揃いにくく、また刈りそろえることになる。
安定した鋏運びが必要となってくる。

いずれにせよ、棟と軒の上下、角と角の左右の通りを見ながら、美しい流れを作り続けていく地道な作業となる。

鋏を、休憩時間に研ぎ澄ませて、また、屋根に向かう職人の手と目と息遣いと熱が注がれていく屋根に、魂が込められていくようで、仕上げたそばから、長く息づいてくれるように、手で撫でさすっていくのだった。