生活困窮者が拒む生活保護制度の壁
新型コロナウイルスの感染拡大で暮らしに行き詰まりながらも、生活
保護の受給を拒む人たちが多い。それは申請の際、自治体が親族に援
助できないかを連絡する「扶養照会」があることと、差別や偏見への
恐れが背景にある。昨年度は、約22万8千件の申請があり前年度より5
千件ほど多く窮地に陥った人の多さが窺える。
生活保護法は、家族や親族の援助が受給に優先すると定めてあり、そ
のため「扶養照会」の対象は、父母や子、祖父母、孫、きょうだい、
配偶者、特別な事情があれば、おじやおばなども加えられる。このよ
うな制度の中で申請を拒む人が多くなるのも当然で、極端には「親族
の恥」と言及される恐れからも拒む人がいるようだ。
先進諸外国と比べても,はるかに受給要件が厳しく、また日本人の国民
性としても申請を躊躇する傾向にあるようだが、生活保護は「健康で
文化的な最低限度の生活」を保障する制度で国民の権利である。それ
が扶養照会によって困窮を知られる人の不安により申請を拒む人が多
いのが現実のようだ。
国は今回の新型コロナウイルスの影響によって職を失い、多くの生活
困窮者が出たことを契機に、生活保護制度の抜本的な見直しが急務で
あり、早急に申請と受給の簡素化に取り組むべきである。