川本三郎氏の名前をはじめてみたのはもう15年ほど前のことのような気がする。岩波のセミナーでの感想を『世界』か何かに書かれていたのが最初にこの人の名前を意識しだした頃のことだと思う。永井荷風についての評伝やエッセーはよく知られているし、映画評論の分野ではもちろん大家である。映画パンフレットのようなものにその名前を見つけたこと記憶がある。他にもカバーしている分野は多く、特にアメリカ文学に関しては、下手な大学教授とは比べ物にならないほど鋭い分析に満ちた論考もある。
そんな川本氏の略歴を見てやや意外にに思ったこともないではなかったが、まさか氏にこのような過去があったとは、昨日の夜まで夢にも思わなかった。昨夜は寝不足がたまっていたせいで、途中から読み始めたこの本を途中で断念せざるを得なかった。そしてきょう昼から一気に読んで、久しぶりにいい本に出会ったという感慨にとらわれた。
まさかこの人に「前科」があるとは思わなかったし、朝日新聞社を「懲戒解雇」されたとは思ってもみなかった。「昨今のジャーナリズムは地に落ちた」とはすでに言い古された言葉である。しかし、この評論家のあまりに苦い過去に当人の筆で接するとき、本当に素晴らしい記事は経験した本人にしか書けないのではないかとさえ思ってしまう。
このブログをご覧になった方には、今でも文庫本で手にはいるのでぜひ本書を「逮捕までⅠ」から読んでいただきたい。
私自身は60年代の政治的風土というものに反発を感じていたが、もしかしたらそれは憧れの裏返しだったかもしれないと今は感じている。イデオロギーの違いはあるにしても少なくとも自分にとってこの本は貴重な精神的財産となったことは言えると思う。
取材対象とジャーナリストとのつながりという点で言うと、自分はどうしてもTBSとオウム、あるいは埼玉の連続殺人事件の容疑者?の有料記者会見などを思い出してしまうが、こんなことを書くのが恥ずかしくなってしまうほど、ここに書かれた事実には真摯なジャーナリストの葛藤があり、夢がある。
それにしても逮捕歴がある川本氏がここまで旺盛な執筆活動をしている原動力は実は本書に登場するKなる存在によるのではないかとも思われる。
川本氏はKに裏切られたように書いているが、むしろKはジャーナリストの本質は集団にいては発揮できないことを「川本三郎」という若い記者に知らしめるべく共犯者に仕立て上げたのではないだろうか。そしてその若き記者が今日の川本氏のような活躍をしていること自体がどんな映画よりも感動的だといったら大げさであろうか。
Kという人物はもうとっくに刑期を終えているであろう。そして現在の川本氏のことをどう思っているのだろうか。
果てしなく想像が広がるあまりにロマンチックな物語がそこにある。
注アマゾンに投稿するかもしれません。アマゾンの本の紹介です
そんな川本氏の略歴を見てやや意外にに思ったこともないではなかったが、まさか氏にこのような過去があったとは、昨日の夜まで夢にも思わなかった。昨夜は寝不足がたまっていたせいで、途中から読み始めたこの本を途中で断念せざるを得なかった。そしてきょう昼から一気に読んで、久しぶりにいい本に出会ったという感慨にとらわれた。
まさかこの人に「前科」があるとは思わなかったし、朝日新聞社を「懲戒解雇」されたとは思ってもみなかった。「昨今のジャーナリズムは地に落ちた」とはすでに言い古された言葉である。しかし、この評論家のあまりに苦い過去に当人の筆で接するとき、本当に素晴らしい記事は経験した本人にしか書けないのではないかとさえ思ってしまう。
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私自身は60年代の政治的風土というものに反発を感じていたが、もしかしたらそれは憧れの裏返しだったかもしれないと今は感じている。イデオロギーの違いはあるにしても少なくとも自分にとってこの本は貴重な精神的財産となったことは言えると思う。
取材対象とジャーナリストとのつながりという点で言うと、自分はどうしてもTBSとオウム、あるいは埼玉の連続殺人事件の容疑者?の有料記者会見などを思い出してしまうが、こんなことを書くのが恥ずかしくなってしまうほど、ここに書かれた事実には真摯なジャーナリストの葛藤があり、夢がある。
それにしても逮捕歴がある川本氏がここまで旺盛な執筆活動をしている原動力は実は本書に登場するKなる存在によるのではないかとも思われる。
川本氏はKに裏切られたように書いているが、むしろKはジャーナリストの本質は集団にいては発揮できないことを「川本三郎」という若い記者に知らしめるべく共犯者に仕立て上げたのではないだろうか。そしてその若き記者が今日の川本氏のような活躍をしていること自体がどんな映画よりも感動的だといったら大げさであろうか。
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