こくご食堂本日のお話は

「買いに来る 売ってもらいに来る」
日本語というものは、実に難しい。
日本語に限らないかもしれないですが、今回、それを感じました。
数週間まえのこと。
野うさぎを食べたことがある母の話になりました。
野うさぎを食べたあと、その毛皮を軒下に干しておくと、
「戦地にむかう人の家族がそれを買いに来る。防寒につかうんだよ。」
と母。
話題の内容がセンセーショナルでした。
野うさぎを食べる。
毛皮を干す。
それを求める人がいる。
生き物をいただき、それを無駄にせず活用するのは、山の住民の知恵。
感心をして
「そうか。うさぎの毛皮を『売ってもらいに来る』人がいるんだね。」
と私。
「?なんかへんな言葉だね。うさぎの毛皮を買いに来るんだよ。」
母
「だから、戦地にいく人の家族がうさぎの毛皮を『売ってもらいに来る』んでしょ。」
私
子供にもどった私は、ムキになっていました。
ずーっと黙って聞いていた父が
「同じこといってるよ。」
と呟いて、ベッドへむかいました。
ハードボイルド。
しばらく、同じやり取りをして、はっとしました。
「あれ、こくごの先生だったよな。私。」
この場合、『買いに来る』がすっきりです。
『買いに来る』は、主語は戦地にいく人の家族。野うさぎの毛皮を干していた母の家に、毛皮を買いにやってくるイメージ。その動作をストレートに表現しています。
『売ってもらいに来る』は、主語は戦地にいく人の家族で上記と同じ。しかし、うさぎの毛皮を買いに来る人の心情を表しています。野うさぎの毛皮は希少価値があり、やっとみつけて購入できて嬉しい、というイメージ。これは、この言葉を発した私の、強い思い入れです。
それを母に伝えたかったのです。
文章としては、
『買いに来る』
が模範解答です。簡潔!
しかし、やっと買えるという状況からは、
『売ってもらいに来る』
が有効です。
と、ここまで書いて。
「どっちでもいいかな。」
と、おもってきました。
いずれにしても、言葉を選ぶとき、故意にまどろっこしい表現をするのも、面白いということです。
簡潔だけがすべてではない。
それが、日本語。
下らない言い争いをした後、(さして、争ってもいないが)シジミの味噌汁を母につくってもらいました。
おいしい。
最後は食べ物でおわる。
私らしいかな。

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