きんちゃんとぎよちゃん

 名前をつけるのは苦手である。うちにいる二匹の金魚の名前は、「きんちゃん」と「ぎよちゃん」。二匹とも、一匹30円程度で売られている小赤という金魚で、大型スーパーのペット売り場で買った。家に来たときには体長三センチほどだったのが、今では成長して体長は倍以上、胴回りもずいぶん太くなった。今年で四年になる。みゆちゃんは二歳なので、実は金魚が先輩である。
 きんちゃんのほうが少し色が薄く、体が大きい。えらく貫禄のあるおなかをしている。それに比べてぎよちゃんはスリムだ。これは二匹のえさの食べ方に関係があるのかもしれない。二匹とも食欲は旺盛なのだが、ぎよちゃんは食べるのが下手である。水面に浮いたえさを食べようとしても鼻の先に当たるばかりで、ちっとも口に入らない。その間にきんちゃんは周りのえさをどんどん食べていく。
 しかしスリムがゆえに、ぎよちゃんだけができる芸当もある。金魚鉢をのぞくと二匹ともえさをねだって口をぱくぱくさせるのだが、ぎよちゃんはまるで鉢の壁面を登るかのごとく、体の半分以上を水面に出して飛び上がるのだ。ちょうど、イルカショーのイルカが体のほとんどを水面からあげて尻尾だけで泳ぐ、あの曲芸のミニ版みたいな感じだ、といえば大げさであるが、家に来た人がぎよちゃんの芸を見てみな驚くので、金魚にしてはちょっと珍しいのだと思う。
 そんな芸をしてえさをねだるので、特にぎよちゃんにあげようとえさをまくと、ぎよちゃんはそれでもまだ芸をするのに一生懸命で、自分の後ろに浮いているえさに気がつかない。結局、何もしないきんちゃんがえさをほとんど食べてしまい、得をする。結果、ますます二匹の体型の差は大きくなるのだった。



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