猫おやじ

 実家に帰ると、針金で作られた長さ60センチほどのかまぼこ型の骨組みが、机の上に置いてあった。何をするものかはだいたい予想がついたけれど、一応そばにいた父に聞いてみた。予想通り、その上に毛布をかぶせて猫のお昼寝テントにするということだった。
 父は、猫おやじである。昔は犬派で猫にはちっとも関心がなかったのが、あるとき庭に住み着いた子猫をきっかけに、あっという間に猫に傾倒してしまった。
 特に父は小細工が得意なので、あれやこれやと猫のための工作をする。
 たとえば、外猫用の小屋。以前は、ポチとちゃぷりのそれぞれにひとつずつ、ダンボール箱で作った猫ハウスが置かれていたのだが、二匹がひとつの箱でぎゅうぎゅうになって寝ることが多かったので、父が二匹ゆったり入れる木製の小屋を作った。二匹が好きなように出入りできるよう、出入り口は二つある。その出入り口には、冷たい外の空気が入り込まないように、塩ビ板の扉が、内にも外にも開くように取り付けてある。扉に透明の塩ビ板を使うところが父のアイデアで、小屋の中から外の様子が見えないと不安だろうという猫の気持ちを慮ったものである。
 しかもこの小屋には温度計までついていて、「外の気温は6度なのに、小屋の中は13度もあるぞ」と父は自慢げだ。室温の管理体制もばっちりなのである。
 ほかにも、庭の南側に設置されている透明のトタン板で作った猫用サンルームや、アリが侵入できないように工夫されたエサの皿などいろいろある。
 我が家の猫たちがハイクオリティーな猫生活を送れるよう、父にはこれからも猫おやじぶりを発揮してもらいたいものである。
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