庭の小鳥(前篇)

 みゆちゃんが庭へ向かって、口を震わせるように「にゃ、にゃ、にゃ」と鳴いた。庭に鳥が来ているのだろう。ネロもちゃめもデビンちゃんも、みんな鳥に対してまるでさえずりを真似るかのような鳴き方をする。
 何の鳥かと庭を見ると、メジロだった。二、三日前に咲き始めたさざんかの花の蜜を吸いに来たのである。萌黄色のきれいなからだに白いアイラインがひょうきんで愛らしい。夏のあいだはほとんど姿を見せないのに、冬にはここに食べ物があることを知っているのだろうか。花から花へせわしなく飛び回って蜜を吸うと、どこかへ飛んでいってしまった。
 二年前の冬、さざんかの花が散ったあともメジロが遊びに来てくれるよう、冬枯れした百日紅の枝にみかんの房をさしておいた。メジロはいつもつがいでやって来て、みかんをかわるがわる突いて食べた。少し食べると、もう一羽と交代する。食べ終わった一羽は、低い沈丁花の木に飛び移って次の順番を待っている。常緑樹の沈丁花は冬にも葉が落ちず、メジロの姿を大きな鳥から隠してくれるので安心なのだろう。そうやって二羽ともお腹がふくれると、そろって沈丁花の枝に並んで休み、毛を繕いあったりした。私は二羽が一緒に食べられるよう、少し離れた二箇所の枝にみかんをさしておくことにした。



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