薄幸猫ちゃぷりの遅い春

 損な性格で、実家の外猫ちゃぷりはあまり人に好かれるような猫ではない。子猫の頃から家のまわりでうろうろしているから、私の知る限り、人間にいじめられたとかそういう経験はないはずだけど、あまり人になつかず、いつもびくびくしている。
 まず要領が悪い。たまに人に寄って来たと思ったら、歩いている人間の出す足の前へ来てぶつかり、「蹴られた!」と驚いて逃げようとすると、今度は反対側の足にぶつかって、「また蹴られた!」とますます疑心暗鬼に陥って向こうへ行ってしまう。こちらもそんなつもりはないのにと、歯がゆいばかり。
 人間の基準でいうと、性格が悪い。私がまだ実家にいた頃、ちゃぷりが特に私を好いてくれた時期があった。その頃は家の中と外で半々くらいに過ごしており、私と一緒に布団に入って寝るほど仲が良かったのだが、それがしばらくすると、ちゃぷりが一方的に仲良し相手を父に乗り換えた。かつてひとつ布団で眠った私が名前を呼んでも、こそこそと逃げるように父の後について行ってしまう。まるで、「私には新しい人ができたの。だから、あんたなんかもう知らないのよ」という感じなのである。
 遊ぶことにも関心のないちゃぷりは孤独を好んで、いつも納屋でひとり寝ていることが多かった。
 そのちゃぷりの前に現れた白馬の王子がポチであった。最初はいがみ合っていた二匹も、今ではすっかり仲良くなって、ひとつの箱に眠っている。
 損な性格から、ちゃぷりは何の面白みもない寂しい猫人生を送るのではないかと危惧していたのだが、ようやく彼女にも遅い春が訪れたのである。



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