日溜りの黒

 公園の黒猫は、木の根っこの間でひなたぼっこをしていた。今日は風が冷たいせいか、公園で遊んでいる子供たちも二三人である。黒猫の邪魔をするものは誰もいない。傍を通ると、また緑色の目を薄く開けてこっちを見た。
 しばらくして木の方を見遣ると、猫の姿がない。どうしたのだろうと公園内を見回すと、先ほど公園にやってきた車椅子の老人の傍にいた。傍といっても一定の距離を置いて、お婆さんと向かい合うように別の木の根元に寝そべっている。
 外出は暖かい服装で、と念を押した気象予報士の言葉を裏切るような陽光が、コートの背中を暖めている。息子は滑り台の土台にあいたトンネルの中に座り込んで、落ち葉をちぎって遊んでいる。ベンチに座って時々猫に目をやると、猫はおばあさんに注意を払う様子もなく、あくびをしたり、耳をかいたり、好きなように過ごしている。
 やがて車椅子の老人が行ってしまうと、今度はお母さんとやってきた小さな女の子が、猫のとがった背中をなでた。
 この前不憫に思った黒猫だが、今日は穏やかな時間を過ごしている。



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