脅す猫

 息子に添い寝して寝かしつけていると、時々みゆちゃんが邪魔をしに来る。息子が寝ている布団の、シーツの下に勢いつけてもぐり込んだり、添い寝している私の背中を蹴っ飛ばしたり。やっと寝ようとしている息子を起こされてはたまらないので、一方の手では息子の肩や背中の上でねんねのリズムをとりながら、もう片方の手で、シーツの下に侵入してくるみゆちゃんを阻止したり、機嫌をとろうとなでたりしている。みゆちゃんとしては、かまって欲しいので、いたずらをすることによって自分に注意を向けさせようとしているのだろうけれど、逆効果だ。息子を寝かしつけさえすれば、私もみゆちゃんをかまってあげられるのに、そこまではわからないのか、それとも別に思惑があるのか。
 といいながらも、実際息子が寝てしまうと、家事をしなければならなかったり、息抜きに自分の趣味をしたりと、なかなかみゆちゃんの相手まで手が回らない。遊んでくれとにゃあにゃあ言うみゆちゃんに、はいはいと適当に返事をしてやり過ごしていると、みゆちゃんは、最終手段に出る。寝ている息子の顔の近くに行って、シーツに突っ込むぞという構えを見せるのである。これは脅迫である。息子を起こされては、せっかくの自由時間がなくなってしまうので、みゆちゃん、わかったからちょっと待って、と大急ぎで紐や猫じゃらしを手にとって、相手の要求を呑むしかない。こちらの痛いところをよく知っているのである。しかも家事をしているときにはあまりこれはやらない。私が絵を描いたり字を書いたりして遊んでいるときに、脅迫の手段をとる。
 2、3年前にテレビで、NHKの「ご近所の底力」だったと思うが、室内飼いの猫のストレスを解消するのに、一日15分遊んであげればいいと言っていた。15分でじゅうぶんです、とアナウンサーは力説していたが、どういう計算で15分なのか、まさか猫ちゃん100匹に聞きました、というわけでもないだろうし、うちのみゆちゃんは、とてもそれだけでは満足しないように思われるのである。
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