猫に餞別(前篇)

 知り合いが、猫と遠くへ旅立つことになった。
 彼の友人たちが、馴染みの店での送別会を企画して、私も呼んでもらえることになった。彼の猫とは、子猫の時分に多少なりとも係わり合いを持ったので、何か餞別の品を贈ることにして、ホームセンターのペット用品売り場へ行った。彼の猫の好みはよくわからないので、うちの猫の嗜好を参考に、何点か選んだ。
 まず、ウサギの毛でできたねずみのおもちゃ。みゆちゃんも大好きであるが、特に実家のちゃめは、あげると1時間ほどでぼろぼろにしてしまうほどの気に入りようである。それから、鳥の羽の束が竿の先についた猫じゃらし。羽の束についた糸を繰り出して伸ばせるタイプのもので、あまり遊び好きでないデビンちゃんも鳥の羽には反応するのから、きっと気に入るだろうと思って選んだ。デビンちゃんの猫じゃらしはピンク色に染められた羽だったのだが、噛み付いたりして遊んだために、唾液で染料が溶け出してしまったので、贈り物は天然の色のものにする。あとは、小さなまたたび棒と、おやつの鰹のスティックを買った。
 猫のあるじには、自分が読んで面白かった猫の本を買って贈ろうかと思っていたのだけれど、都合で本屋へ行く時間がとれず、堅苦しい間柄でもないから、私の読んだお下がりでもいいかしらと思って調べてみたら、汚れたり破れたりしていたので断念し、結局、猫の餞別だけを持って、送別会の会場へ向かった。(つづく)
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