ネコとネズミ

 棲みついているのか、遊びに来るだけなのかわからないけれど、家の天井裏を、ときどき鼠が走り回る。今朝もまだ早い時間に、とっとことっとこ、たかたかたかと、まるで鼠の大運動会で、家の者はみな目が覚めてしまった。
 もっとも姿を見たことはない。押入れにしまっていたキャットフードが食い散らかされて、そばに黒い小さな円筒形の鼠の糞が落ちていたので、天井裏にいるのも鼠だと思っている。
 彼らがその存在をはじめてあらわにしたのは、この家に引っ越して3週間ほどたった夜、ちょうど、車にはねられて大怪我を負ったみゆちゃんを保護した晩で、箱の中でうずくまるみゆちゃんを、夫と二人、囲うようにして見守っているときであった。時刻はすでに夜中の1時を回っていたと思うけれど、突然、横の壁の中で、ばりばりばりっと言う音がして、その音の中心が、がりがりがりと左へ移動していった。夜更けに、ただでさえ、瀕死の子猫のことで神経が過敏になっていたから、心臓が止まるかと思うくらい吃驚した。
 それから、ときどき、天井裏などで物音がするようになって、最初の頃はそのたびにどきっとしたものだけれど、今ではすっかり馴れてしまい、ああ、また来たか、くらいにしか思わない。
 みゆちゃんはといえば、天井裏がとことこ、かさこそ言うたびに、きっと目を開いて、耳とヒゲのアンテナをフル稼働し、音のする一点を見つめている。猫のいる家で自由気まま、勝手に振舞うとはなんとも失礼な鼠どもで、みゆちゃんは悔しくてしょうがないだろうけれど、相手は天井裏なので、にゃんとも手の施しようがない。(つづく)
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