お外はつまらにゃい!―ちゃめがうちに来た理由―(中篇)

 母猫は依然、人になでられたりはしなかったけれど、子猫を家の庭に遊ばせているくらいだから、私たちに対して、ある程度の信用を置いているようだった。子猫と遊ぶ一方で、彼女とももっと親交を深めようと、私はチーズを取り出した。母猫はチーズに目がないのである。
 家の裏の階段に座って、まず少し下の段にチーズを置いてみた。母猫は、こちらの様子を伺いながら、大好物のチーズを食べる。負けん気で警戒心が強く、しっかり者の母猫だけれど、チーズが欲しくてたまらない顔をして階段の下に座っていて、なんともいじらしい。今度は私の足元すぐ近くにチーズを置いて、そ知らぬ顔をする。人間は怖いけれど、チーズは食べたい。母猫は私の顔をちらりちらりと見ながら、急いでチーズを取ろうとする。が、スライスチーズは地面にへばりついてなかなかとれない。チーズをはがそうとあせっている母猫の首のあたりを、そうっとなでてみる。猫は一度はぱっとあとずさるけれど、チーズの魅力には抗えなくて、また首を伸ばし、私は猫に触れる。そんなことを繰り返して、少しのあいだはなでていられるようになったけれど、結局それ以上は無理であった。(つづく)
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