猫に餞別(後篇)

 店には少し早めに着いてしまったので、私のほかにひとり来ているだけだったが、その人や店主と無駄話をしているうちに、ぽつりぽつり人が集まりだして、やがて全員がそろった。
 いつ猫グッズを渡そうかしらと窺っているうち、別の一人が、餞別を渡した。主賓がその包みを解いていると、渡したその人が「○○君のはないんだけど…」と言い、中から出てきたのは、猫のおもちゃであった。そこで私も、「ごめん、私も○○君のはない」と言って餞別を渡した。○○君は「誰の送別会かわからないなぁ」と苦笑いしていたが、人の好い彼は、猫への餞別を喜んでくれていたようであった。
 一緒に連れて行った息子が眠くなりだしたので、早々に引き上げてしまったのだけれど、あとで○○君がメールで、羽のおもちゃがとても猫に受けているということを書いて送ってくれた。もう寝るよと明かりを消した後まで、遊びたがるほどだそうだ。
 ちなみに、○○君の新居は、「猫歓迎」という羨ましいマンションである。大家さんが猫好きだそうで、洗面所には猫トイレを置くスペースがあって、猫が自由にトイレにいけるよう、小さな専用扉がついており、さらに部屋の壁には猫用のステップと、猫が歩ける細い道が作り付けられてあるらしい。最近ではペット可物件も増えてきたようだけど、「歓迎」まではなかなか聞かない。私が言う立場でもないけれど、よかったなあと思うのである。
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