「視界不良」の新穂高ロープウェー

 新穂高ロープウェー山麓の新穂高温泉駅。曇りがちの空模様で、切符売り場の窓口の上の掲示板には、「山頂の気温8度。視界不良」とあった。
 視界不良と言っても、少々山が見えにくいくらいだろうとたかをくくって、往復の切符を買って、ゴンドラに乗り込んだ。
 小さくなっていく駐車場の車を眺めたりしていたが、そのうち、最初の急斜面を登って山を越えた向こうの空が真っ白になっているのに気がついた。雲が押し迫ってきていて山の端の木々が飲み込まれそうになっている。
 そう思っているうちに、先へと伸びているはずのゴンドラのロープの先が雲の中にすっかり消えてしまって、ゴンドラはガスの中に入った。
 窓の外は真っ白である。息苦しいくらい濃い霧に押し包まれていて、ときどきロープを支える鉄塔が、霧を破って突然前方に現れる。斜面の森が一瞬見えたかと思うと、すぐにまた白い霧に包まれて消えてしまうのが、もどかしい。
 山頂の西穂高口駅の展望台も、当然雲の中である。数メートル先に立つ人の姿もおぼろげだ。あまり山に詳しくないけれど、こういうのを視界「不良」というのだろうか。視界「極悪」などといったほうがぴったりではないかと思ってしまう。
 ゴンドラで雲の中に突っ込んでいくのはそれなりに面白い体験だったけど、ただそれだけのためには、払ったロープウェー代は少し高すぎた。
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