狩野永徳展

 京都国立博物館に、狩野永徳の特別展を見に行った。狩野永徳といえば、狩野派を代表する画家である。その知名度の高さのためか、博物館はたくさんの人で込み合っていた。
 恥ずかしながら、今回の展覧会を訪れるまで、狩野永徳の作品というのは、学校の歴史の教科書に載っていた「唐獅子図屏風」しか知らず、永徳の作風というのは、獅子に現れるような大胆で力強いものだと勝手に思っていた。したがって、館内に入ってすぐの花鳥風月の絵を見て、いささか驚いた。非常に繊細なのである。木の枝に止まる鳥たちの翼はバランスをとるために今にも羽ばたくかのよう、か弱い足でしっかりと枝を握り締め、細いくちばしは可愛い声を発するかのようである。草や花は風にそよぎ、赤く色づいた木の実は枝からこぼれ落ちそう。そういうひとつひとつのものが、緻密に、生き生きと描かれていた。そうかと思えば、唐獅子や、雲間に現れる龍など、気迫が伝わってくるような大胆な絵もあって、永徳とは、その二つを併せ持った人なのだと思った。
 そのほか、壁画縮図などは、下書きのような線で描かれた絵に、ところどころメモ書きが入れられているのだけれど、そのタッチが、いまの漫画みたいで面白かった。
 見ごたえがありすぎて、薄暗い照明の中で一生懸命目を凝らしたから、全部見終わって明るい青空の下に出たときは、ひどく目が疲れていた。
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