尼御前岬公園(奥飛騨旅行記)

 北陸道の尼御前SAで休憩をとったときに、すぐ近くに尼御前岬公園というところがあるというので、歩いて行ってみた。岬から浜辺の松林までの一帯が公園になっていて、杖をついた小柄な尼御前の像が立っている。源義経が都落ちしてここを通ったときに、足手まといになることを恐れた尼御前が自ら命を絶ったという伝説が、尼御前岬という名前の由来となっているらしい。
 空はよく晴れていて、翼を広げたとんびが、松林を越えた強い海風を受けて、どんどん高みに昇っていった。小松空港に着陸する飛行機が高度を下げて空を横切ると、轟音がそのあとを追った。
 岬から見る日本海は青く、その色合いは岸から沖へ離れるにつれて、四段階くらいに変化していた。ついこのあいだまでの夏日が嘘のような、秋の海である。風の中で虫が鳴いていた。
 海の風にすっかり冷えて、風を防いでくれる松の林の中に戻った。よく手入れされた柔らかな芝生が広がっていて、その上に一面、茶色く枯れた松葉が散らばっていた。
 広場の真ん中に、松葉が不自然に集まったところがあった。松葉がハートの形に並べられて、ハートの中に、イニシャルなのだろう、アルファベットが四つ並んでいた。
 片想いの女の子か、幼い恋人たちか、それとも旅の風に若やいだ熟年カップルか。松葉のハートを作った人を想像した。
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