いやな予感が的中し、
すさまじい騒がしさで観光バスに乗り込んできた、
6人のオバチャンたち。
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当然のことながら、
バスの中は一気にどよーーん。
でも、本当に大変だったのは、
そこからでした。
「皆様、本日は❍❍観光バスにご乗車いただき、
まことにありがとうございます」
バスガイドさんの言葉が聞き取れたのは、
最初の、この挨拶だけ。
マイクを持っているガイドさんの声が、
生で喋くるオバチャンたちの声に、
完全にかき消されるんです。
「すみませーん。
マイクのボリューム、上げてもらえますか?
お喋りがうるさくて聞こえないので」
と、イヤミたっぷりに頼んでも、
みんなが、かなり本気でにらんでも、
「うるさいなぁ」と声に出しても、
<世界の中心はわてらやで~>
そんなことで気がつくような、
ヤワなオバチャンではありません。
・・・あのさぁ
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今バスが走っている、この場所の説明や、
これから行くお寺の、
故事来歴を聞きたいのよ。
別にアンタたちが昨夜、
居酒屋とカラオケで盛り上がって、
みっちゃんが酔っ払って大変だった、
なんて話を聞きたいワケじゃないのよ
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でもね、みんな直接は言わないんです。
はい、私たちも言いませんでした。
だって、バスが走り始めて、まだ10分弱。
観光はこれからなのに、
こいつらをヘンに怒らせたら、
どんだけややこしいか・・・
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そのうち、乗客が1人、2人と、
席を移り始めました。
オバチャンたちの指定席は後ろ寄り。
そこで、その近くの乗客が、
前へ前へと民族の大移動を始めたんです。
けっこう混んでいたんですが、
2人掛けで1人座っていても、
「すいません、相席よろしいですか?」
「はい、どうぞどうぞ!・・・大変でしたねぇ」
と、不思議な連帯感まで生まれて(笑)
前はぎゅうぎゅう、後方はオバチャンたちだけ、
という、すごい車内に
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うるさいのは一向に変わりませんが、
これでとりあえず、
ガイドさんの声は聞こえるようになりました。
でも・・・、
災難は、ここからが本番だったんです。
(つづく)