アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

感動的な「わが祖国」~アルトリヒテル

2018-09-23 22:00:00 | 音楽/芸術

今シーズン2回目の新日本フィル定期演奏会。まだ2回目だが、とてつもない演奏を聴いた想いで今満たされている。舞台上には、新日本フィルのいつもの布陣たちが顔をそろえていたのだが、出てきた音楽は、今までとはまるで違う。良い意味で荒々しく豪快で、スケールが途轍もなくデカかったのだ。

今回の楽曲は、スメタナの交響詩である「わが祖国」全曲だから、アントンKにとっては、五線の隅までわかっている訳ではないのだが、音楽にメリハリがあり、自然と意識が遠のき吸い込まれてしまうような錯覚が襲ってきた。オケ全体を支配する緊張感が客席にも届き、息を飲むのもためらってしまう。それもそのはず、今回の指揮者ペトル・アルトリヒテル氏の熱量、いや放熱は凄まじかった。第6曲まで分かれているこの「わが祖国」では、最も有名な第2曲「モルダウ」中間部あたりから放熱が始まり、オケと指揮者の一期一会の葛藤が見て取れたのである。何しろ、この指揮者アルトリヒテルの指揮ぶりは、大柄な身体をも伴ってダイナミックであり、指揮棒を持ち替えながらオケをあおり、そして優しく愛撫する。時には、雄叫びを上げ具体的に奏者を指し示して、楽曲を形作っていったのだった。

尻上がりに燃え上がっていった演奏であったが、特に印象的だったのは、第5曲から第6曲にかけての民族的な土俗的な響きは、アントンKにとっては近年忘れかけていた響きだった。それは昔聴いたクーベリックの音色を思い出し、ノイマン/チェコ・フィルに通じる響きだったのだ。

新日本フィルは音楽監督の上岡氏のもとで、演奏に対する研鑽を積み重ねて、ここへきて響きに対する技術的な高さをアントンKは今回の演奏会で目のあたりにした思いである。炸裂する打楽器群はもとより、木管楽器には歌があり、また懐かしさも垣間見える。そして何と言っても崔文洙氏率いる弦楽器群の音は、まさにチェコの分厚い土俗的な音だったのだ。Dbの野太い土臭さから、Vnの明るく切れの良い和音の世界。それは数年前のチェコ・フィルを彷彿とさせるのに十分だったのだ。地響きのような荒々しい響きから、崔氏をトップとするVn群のあの美しい自信に満ちた歌の世界。あの無骨な指揮から、どうしてあんな音色が構築されるのか、鑑賞しながら終始圧倒されていたのである。こんな独自性満載の演奏だから、次はドヴォルザークでぜひ聴いてみたいところ。次回のアルトリヒテル氏との演奏会も心待ちしたい。

新日本フィルハーモニー交響楽団 第594回定期演奏会 ジェイド

スメタナ  連作交響詩「わが祖国」

     1 高い城

     2  モルダウ

         3  シャールカ

     4  ボヘミアの森と草原から

     5  ターボル

     6  ブラニーク

指揮    ペトル・アルトリヒテル

コンマス  崔 文洙

2018年9月23日  東京サントリーホール