碓氷線が消えてから随分と時間が流れてしまった。立派な本線にして、全列車重連補機を連結しないと峠を越えられない線区だから、特殊中の特殊だろうが、こうして時間が経ってしまうと、何もかもが懐かしく思えてならないのだ。ロクサンの力強い面構えは、かろうじて今でも横川へ出向けば我々を迎えてくれるが、あの山々にこだまするロクサンの雄叫びは過去帳の中へ入ったきりだ。蒸機列車のように、まず音から認知され、ゆっくりと迫ってくる電気機関車は、このロクサンくらいなものではないのか。横川と軽井沢の間のみの運転であり、その特殊性から好みは随分と別れるようだが、アントンKにとってJR化後のロクサンは身近な存在になっていた。結局のところ97年の廃止まで、峠の春夏秋冬をテーマとして何度も通ったが、コマ数は多いものの類似画像が多く、今にして思えば納得できていないのだ。
今回は、ロクサンが最後の66‰をせり上がってきた単機回送を掲載しておく。EF63の運転特性上、連結面側の走行写真は撮影しにくい。当然連結面だから、上下列車ともに先頭に立つことはなく、狙いは単機回送列車のみという事になる訳だ。多種多用の車両を押し上げるためか、数々のジャンパ栓が鈴なりになり、双頭連結器とともにかなりの重装備な顔つきなのだ。幸いにも、夕方には定期で軽井沢まで上る単機回送列車の設定があり、気が付けば碓氷に行けば必ずこの単機を狙うようになっていった。俯瞰撮影も試みたが、やはりせっかく前に顔を出している重厚な面構えだから、正面がちに捕らえることが増えていった。写真は、夕日に輝く軽井沢の矢ケ崎で撮影したロクサンの雄姿。当時バケペンに400mmを導入直後で、機会を見つけては400mmで撮影していたが、このレンズはピントの山を掴むのが難儀であり、本当に苦労したレンズ。ピントが決まれば途轍もない画像が得られるのだが、最後の最後まで難しかった思い出が多々蘇るのだ。
先日の鉄道模型イベントで「峠の釜めし」を食った。
価格はともかく、中身は当時と変わってないと思われるが、何か昔とは違って感じる。ドライブインやサービスエリアで食べた時も同じ思いだった。やはり「峠の釜めし」は、峠の中で、ロクサンを感じながら食うに限るのだ。
1994-08-18 単171ㇾ EF6310 JR東日本/信越本線:軽井沢付近