人生アラカルト

どうせ過ごすなら楽しくね。

手術室でタンゴ

2022-06-25 18:38:50 | 80はミステリーゾーン
三浦一馬 リベルタンゴ / Kazuma Miura "Libertango"


12年前、胃がんで胃を全摘した。
その時の手術室で。

「手術の時、かけるCDがあれば流し
ますよ」 世の中変わったもんだ。
好きな音楽を聴きながら、胃を失う
か。

手術室から、提案を受けたらうれし
くなった。こわい手術もやや和らぐ
かも。前日、同室の大学の先生と曲
選びで楽しんだ。

病院へ持ち込んだCDはクラシックな
ら病気にやさしいモーツアルト。シャ
ンソン、アルゼンチンタンゴ、そして
ちあきなおみ。

ベートーベンはあかんと思う。妙に深
刻になったりして、ストラビンスキー
もっとあかん。傷口がえぐられる。だ
から、持って来なかった。

シャンソンは心落ち着くが、振られた
だの悲恋の歌が多い。アルゼンチンタ
ンゴの歌の内容は似たものだが、リズ
ムがいい。

結局、京都の楽団「アストロリコ」の
アルバムを手術室の看護師さんに渡し
た。

ちあきなおみも候補にあがったが、「い
つものように、幕(膜)が開き」では、
手術にはなまなましい。で、やめた。

アルゼンチンタンゴの[ALGUEN CAN
TO]は意識あるうちにかかればよし。
「別れの朝」でおなじみだが、スペイ
ン語で歌っているので、内容は分から
ない。

さて、手術当日ストレッチャーに乗せ
られて、手術室へ。
この日は手術日とかで、いくつもある
手術部屋はどこもにぎわっている。

てきぱきとした看護師さんの手により、
私は手術台に乗せられた。
まだ、外科医の先生たちはいない。

CDがかかった。バンドネオンの音色が
手術室に流れる。最初の曲はやさしい
ので、心がやすらぐ。

「麻酔をかけますね」

その声を聞いてからすぐ眠りに入った。
「別れの朝」はずっと先だから、もち
ろん聞くことができない。

「ご苦労様、無事終わりましたよ」

眠ったと思ったら、起こされた。あっと
いう間だった。その間手術に4時間かか
っていた。

CDによる音楽療法は好みの曲を聞かな
いうちにジ、エンド。

(今度、胃とともに手術した食道がんの
その後を追う胃カメラを飲みます)