「禁じられた遊び」は,フランスのルネ・クレマン監督によって1952年につくられた映画です。第二次世界大戦の記憶が残る時代の作品です。かって見たことのある映画だったのですが,改めて見ることで,この映画の魅力を新たに見出すことができたように思います。
主人公は,両親と愛犬を戦闘機の機銃掃射によって亡くした5歳の少女ポーレットとミシェルという少年です。ミシェルは,死んだ愛犬を抱いてさまようポーレットと出会い,その身の上を知って同情する心優しい少年です。裕福ではないのに両親に熱心に頼み,ポーレットを家に置いてもらうことにします。
ポーレットは,ミシェルを頼り,ミシェルもポーレットを実の妹のように大切にします。ポーレットは,死んだらお墓に入るというミシェルの話を聞いて,死んだ愛犬のお墓をつくります。お墓の十字架はミシェルがつくってくれました。やがて,ミシェルの兄さんが不慮の事故でなくなり,ミシェルもポーレットも葬儀に参加します。そこでポーレットは,教会にある立派な十字架を見てそれを愛犬のお墓に飾りたくなります。その思いを察したミシェルは,その十字架を盗もうとしますが失敗します。
お墓は死んだ人が寂しくないように集まってつくられているんだというミシェルの話を聞いて,ポーレットは死んだ愛犬も寂しくないようにしてあげたいと思います。ミシェルは,他の生き物も(死んだものだけでなく)周りに埋めて,ポーレットと一緒にお墓をつくります。お墓に必要な十字架は,墓地から運んできました。廃墟の一画に十字架があちこちに立つきれいな墓地ができあがります。しかし,やがて本物の墓地の十字架がなくなったことが明らかになり,ミシェルが犯人であることがわかります。
そして,いよいよ別れの日がやってきます。ポーレットが戦災孤児であることがわかり,施設の担当者が迎えに来ます。その人に連れられて駅まできたポーレットは,人ごみの中で「ミシェル」と呼ぶ声を耳にします。がまんができなくなったポーレツトは,大好きだったミシェルのことを思い出し,涙を流しながら「ミシェル!」と呼びながら人ごみの中に消えて行きます。
ギターの名曲「愛のロマンス」の切ないメロディーが,切々と心に響いてきます。
愛する両親を亡くし,愛犬を亡くしたポーレットにとって,寄り添うように面倒をみてくれたミシェルを失うことはどんなに悲しいことだったのでしょう!
涙でくしゃくしゃになったポーレットの顔と人ごみの中に消えて行く小さな後ろ姿が,今でも心に浮かんできます。
戦争によって 両親と愛犬を失ったポーレット。その一人ぼっちになったポーレットのために「禁じられた遊び」を一緒に行なったミシェル。
許されない遊びだったのにもかかわらず,二人のつくった墓地が,まるでファンタジーの世界のように美しい風景として心に残ります。
最後のポーレットの後ろ姿に,震災で両親や兄弟姉妹を失った子どもの姿が重なります。
未来がその子どもたちにとって幸福なものであることを,心から願わずにはいられません。
『子どもが幸せである世界が,大人も幸せな世界である』ということを 改めて思います。
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