谷川俊太郎が文を書き、和田誠が絵を描いた、絵本『ともだち』を紹介します。<玉川大学出版部刊>子どもはもちろんですが、大人にとっても、友だちとはどんな存在でどうあるべきか、改めて考えさせられると共に、人と人とが関わっていく上での、基本となる大切なルールについて、気付かされます。ここでは、絵の紹介ができないので、文のみ取り上げます。この文ならこんな場面と、文に合う絵を想像しながら読んでいただけたらと思います。実際の絵本も、○印の文に一枚の絵という構成になっています。
◇ともだちって (どんな人か)
○ ともだちって かぜがうつっても へいきだって いってくれるひと。 ○ ともだちって いっしょに かえりたくなるひと。 ○ ともだちって おかあさんや おとうさんにも いえないことを そうだんできるひと。 ○ ともだちって みんなが いっちゃったあとも まっててくれるひと。 ○ ともだちって そばにいないときにも いま どうしているかなって おもいだすひと。
◇ともだちなら
○ ともだちなら たんじょうびを おぼえていよう。 ○ ともだちなら びょうきのときは おみまいに いこう。 ○ ともだちなら たびにでたら えはがきを かこう。 ○ ともだちなら かりたものを きちんと かえそう。 ○ ともだちなら いやがることを するのは よそう。
◇ひとりでは
○ ひとりでは もてない おもいものも ふたりでなら もてる。 ○ ひとりでは とどかない せなかも ともだちが いれば かいてくれる。 ○ ひとりでは こわい よるのみちも ふたりで あるけば こわくない。 ○ ひとりでは つまらないことも ふたりで やれば おもしろい。 ○ ひとりでは できないことも ともだちと ちからを あわせれば できる。
◇どんなきもちかな
○ しかられた ともだちは どんなきもちかな。 ○ なかまはずれに されたら どんなきもちかな。 ○ しっぱいを わらわれたら どんなきもちかな。 ○ ないしょばなしを されたら どんなきもちかな。 ○ やくそくを やぶられたら どんなきもちかな。
◇けんか
○ じぶんの いいたことは はっきり いおう。あいての いうことは よくきこう。 ○ わるくちは いったっていい、でも かげぐちを いうのは よくないな。 ○ けんかは したっていい。でも ひとりを たくさんで いじめるのは ひきょうだ。 ○ おかあさんや おとうさんや せんせいに いいつけるのは ずるいんじゃないかな。 ○ なかなおりするには けんかをするのと おなじくらいの ゆうきがいる。だけど わるかったと おもったら 「ごめんね。」と あやまろう。
◇ともだちはともだち
○ すきなものが ちがっても ともだちは ともだち。 ○ ことばが つうじなくても ともだちは ともだち。 ○ としが ちがってても ともだちは ともだち。 ○ おかあさんと おとうさんも ときどき ともだちみたい。 ○ にんげんじゃなくても ときには ともだち。
◇あったことがなくても
○ どうしたら このこの てだすけが できるだろう。あったことが なくても このこは ともだち。 ○ このこのために なにを してあげたら いいだろう。あったことが なくても このは ともだち。 ○ おかねもちのこ まずしいこ。どうしたら ふたりは ともだちに なれるのだろうか。 ○ だれだって ひとりぼっちでは いきてゆけない。 ○ ともだちって すばらしい。
◇ 最後に書かれている詩
ともだちと てをつないで / ゆうやけを みた /
ふたりっきりで / うちゅうに うかんでる--- /
そんな きがした /
ともだちと けんかして / うちへ かえった /
こころの なかが / どろで いっぱい--- /
そんな きがした /
ともだちも / おんなじ きもちかな
もし、子どもたちにこの絵本を紹介する機会があったら、紹介の後に◇の観点から、自分なりの言葉や絵で「ともだち」という絵本をつくってみようと呼びかけたいと思います。自分の身近にいる友だちとの関係を振り返り、どんなともだち関係をこれからつくっていくのか、その子なりの願いや思いを込めた絵本ができあがるような気がします。そして、その絵本をお互いに読み合う機会をもてたら、いいですね。
特に、◇「あったことがないともだち」という観点から、どんな思いや考えを文にし、絵にするのか、とても興味があります。そばにいなくても、あったことがなくても、ともだちとしてその子たちとどうかかわっていくのか。同じ子どもとして、同じともだちとして、想像力豊かな思いや考えが出てくるような気がします。
絵本はところで、言葉を失った人にも有効だそうですね。私も以前勧められたことがあります(何があったかは伏せますが)。単純な世界に込められた祈り、それも純粋に生きる気力につながるかもしれませんね。結局、産んだ者の勝ちかも・・・。