あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

大石邦子さんの講演を聞いて

2014-12-20 17:19:41 | 日記
先日、大石邦子さんの講演を聞く機会がありました。
大石さんは、福島県会津在住のエッセィストです。
22歳の時に 事故に遭遇し半身麻痺の身となります。
以来 絶望の淵に立たされながらも さまざまな苦難を乗り越え生きてこられた方です。 
体験を通して語られる言葉の一つ一つが 強く心に響く講演会でした。

人間は、絶望の淵に立たされた時、どうやってそこを乗り越えることができるのでしょうか。大石さんにとって、お母さんの一言に込められた愛が、何よりの大きな支えとなったようです。

半身麻痺となった辛さを「私のすべてが終わってしまった」と病室でお母さんに嘆いた時、「すべてが終わったのなら、また新しいことの始まりでもあるのね…」とお母さんが語ったそうです。辛い現実であっても、どんなに未来が生きていく上で困難なものであっても、それを受け入れ、乗り越えて 新たな人生を生きていってほしい。そんな願いを込めた言葉なのだと思いました。

大石さんに好意をよせていた男性がいました。何年もの間欠かさず病室を訪ね、来ることができない時には手紙を書いてくれたそうです。やがて彼はさまざまな事情から大石さんのもとを去ってしまいます。病院から自宅に帰ることができた日に、大石さんは受け取った手紙の束を持ちかえり、涙ながらに燃やしたそうです。燃える手紙を見つめ泣き崩れた大石さんを、お母さんは抱きしめ頭をやさしくなでながら、「こうやって大人になっていくんだね。」と語ってくれたそうです。

ご両親が亡くなり、広い家に一人で暮らすようになった頃のことです。雪に閉ざされたある夜、大石さんは何もかもがいやになり自分なんかどうなってもいいという絶望的な気持ちになってしまったことがありました。その晩、お母さんの夢をみたそうです。
鮮やかな緑に包まれた森の一画にベンチが一つあり、そこだけ木々の間をぬって光があたっていました。そのベンチに亡くなったお母さんが一人腰を下ろしていました。うれしくなって駆け寄ると、大好きだった笑顔でお母さんは迎えてくれました。お母さんの膝の上には小さなリュックが置かれていました。大石さんは、私が持ってあげると言ってそのリュックを手にしました。ところがそれは抱え上げるのも大変なほど重いもので 必死になって持ち上げたそうです。
夢はそこで途切れてしまいますが、お母さんに再会することができ、大好きだった笑顔にふれることができたことに、大石さんは新たな生きる力を与えてもらったのだそうです。
その夢の話を聞いた親しい友人が、なぜリュックがそんなに重かったのか、その理由を次のように語ってくれたそうです。 
リュックの中に入っているのは、お母さんの深い悲しみ。大石さんが生きていく上で背負う苦しみや辛さを 一緒になって受け止めてきたからこそ、それだけ重くて深い悲しみとなっているのではないか と。
きっと 我が子が新たな辛さや悲しみを抱えるたびに、お母さんのリュックは重くなっているのだと思いました。

入院中にお世話になった看護婦さんも、大石さんを支えてくれた人でした。
桜の花の咲くころ、入院していた大石さんは 夜中に どうしようもない絶望感にとらわれ、自暴自棄になって病室内のものを投げつけ暴れるということがありました。物音を聞きつけ心配になって駆け付けた看護婦さんにも物を投げつけました。しかし、看護婦さんは何も言わず、大石さんの感情がおさまるまで見守っていてくれたそうです。そして疲れ果てた様子を見るとそばに来て、「桜でも見に行こうか!」と言って、大石さんをおんぶしたそうです。病院の階段を降りる時に感じた 看護婦さんの背中の温もりを 今でも忘れないそうです。

辛い思いを優しく受け止めてくれた看護婦さんの一言と温かさに、救われるような気持ちになったのだと思います。肉親でもないのに こんなにも自分の心によりそい、支えてくれる人がいるのだということを 実感されたのだと思います。

大石さんにとって、お母さんは どんな苦難にあっても 絶えることなく 自分を温かく見守り 支え 心の内に生き続ける存在なのだと思います。
また同時に、おんぶをし夜桜を見につれていってくれた看護婦さんのように、他人の辛さや苦しみによりそい支えてくれる人の存在が、絶望の淵から 救いあげてくれる 何よりの光明になるのだと思いました。

多くの人に支えられているからこそ、どこかで誰かを支える手助けができる自分でありたい と強く思いました。

※メモもとらず、頭の中に残った話を思い出しながら書いたものですから、多分に私の主観と考えの入った 講演紹介となってしまったかもしれませ ん。ただ、大石さんの趣旨と異なる内容となっていたら大変申し訳なく思います。

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