京都楽蜂庵日記

ミニ里山の観察記録

時間についての考察 :時は金なり

2019年07月21日 | 時間学

  

 

 現在、株式市場の取引では、超高速のロボットトレーダーが活躍している。これはマイクロ秒(10-6 sec) 単位で電子取引を判断・実行し、その圧倒的なスピードを武器にして、市場で儲けようとするものだ。これを利用した手法の一つが「先回り」である。

 アメリカでは10以上の証券取引所が存在するために、分割されて送信された注文が届くまでに、わずかな時差が生ずる。高速ロボットトレーダーは、最初に取引所に着いた情報を取得し、時差を利用し別の取引所に先回りして、そこで注文して悪い価格提示に置き換える。これをマイクロ秒の単位で処理するのである。その利益はわずかだが、チリも積もれば山となるで、同様の手法で無数に「先回り」を繰り返すと大きな利益がでる。

  これは、いまのところ違法ではないが、こういった装置には高額な投資が必要で、それができるものと、できないものとの間の不公平さが問題とされている(総合的には損するのは一般投資家)。家のパソコンで、できるような仕事ではないのだ。2010年5月6日アメリカの株式市場でに短時間で株が乱高下する事件(フラッシュ クラッシュ)がおこったが、これの原因は高速ロボットトレーダーだと言われている。

 高速ロボットトレードは単純で機械的な取引であるが、規模の大きいヘッジファウンドでは、これとAIを組み合わせて相場の変動パターンを分析し、アルゴリズムによる取引に応用しているらしい。いずれにせよ、一般投資家は、どこの国でも金持ち(情報所有者)の餌食になる仕組みになっている。

 

参考図書

桜井豊 「人工知能が金融を支配する日」東洋経済新法社 2016

マイケル・ルイスフ 『フラッシュ・ボーイズ-10億分の1秒の男たち』 渡会圭子、東江一紀(訳)文芸春秋、2014

 


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