台湾海峡情勢について、危機感を述べる麻生副総理を朝日新聞が7月5日に報じています。
都議選終了間際に、「(小池都知事が倒れたのは)本人の自業自得」とコメントして、これが都民ファーストのフォローの風になるなど、何かと「失言癖」が直らない麻生副総理ではありますが、台湾海峡情勢について、「大きな問題が起き、日本にとって『次は』となれば、存立危機事態に関係してくるといってもおかしくない。日米で一緒に台湾の防衛をやらないといけない」と述べ、台湾有事を念頭に集団的自衛権を行使できる存立危機事態の認定につながる可能性を指摘したとのこと。
もちろん、この法律解釈には異論があることは承知しております。また、朝日新聞としても、むしろ「また麻生副総理の口が滑った」事例として取り上げたものなのでしょう。
しかし、台湾海峡情勢について、この危機感を持つことは正しいと、自分は考えております。以前にも申し上げましたが、「一帯一路」に続く、中国の狙いは「太平洋への進出」。その足掛かりが台湾であり、そのあとは八重山諸島と宮古島が標的です。
もともと琉球王朝は、江戸時代には薩摩の実効支配を受けつつ、明・清に対しては冊封という、従属する立場にありました。したがって、明治に入って、日本政府が沖縄県として強制併合した際には、清から強い抗議を受けて、その領有に関する交渉が続けられたのです。明治13年には、いったん沖縄本島までは日本、八重山諸島と宮古島は清、という日本側からの提案で合意が成立しかけましたが、沖縄自身の反対と清国内の保守派の反対で合意に至らず、結局は、明治28年に日清戦争の終結に際して、台湾自体が日本に譲渡されたことで、琉球領有問題はうやむやになった経緯があります。
もちろん、今さら中国が何を言おうが、八重山諸島も宮古島も日本の領土ですが、台湾が中国帰属となれば、次はここにいちゃもんを付けて、軍事的にも八重山諸島・宮古島に圧力をかけ続けることは明らかです。そうなる前に、台湾を防衛ラインにすることは、日米ともに利害が一致しますので、麻生副総理の危機感は正しいですし、未来を見据えた見識だと考えます。
こういう大事な近代史を、日本の報道機関は必ず「補足」してほしいと思います。そうでないと「何を国民に伝えたいのか」が曖昧で、ただ薄っぺらな記事にしか見えませんので。