先週のステイヤーズSを制したのは、7番人気のオセアグレイト。この気難しいオルフェーヴル産駒を勝利に導いたのは52歳の横山典騎手。ステイヤーズSは6度目の勝利なので、長距離レースは騎手の手腕、という格言どおりの結果になりました。
道中、宥めるだけ宥めて、直線でエネルギーを弾かせる、という勝ち方でしたが、オルフェーヴル産駒に卓越したスタミナが溢れていることを熟知していないと、長距離レースでは、こうした我慢はできません。お見事というしかないでしょう。
ただ、ここからは少し辛めの評価をお話したいと思います。横山典騎手は、「イチかバチかの騎乗が多すぎる」ので、人気馬に騎乗した時は、特に気をつけないといけません。一番典型的な事例は、今年春のGⅠ大阪杯。ルメール騎手が急遽ドバイへ行くことになり、大本命のダノンキングリーの騎手が横山典騎手に替わりました。
この時、横山典騎手は、スタートが想定外に良かったことから、何と逃げる選択をしました。横からジナンボーが先頭に立つ素振りを見せていたにも関わらず‥です。結局、そのままレースは進んで、直線で、ダノンキングリーのすぐ後ろでマークしていたラッキーライラックとクロノジェネシスに差されて、3着に沈みました。前哨戦の中山記念では、ラッキーライラックを全く相手にしない完勝だったのに、本番でまさかの逃げに出て、負ける。これでは、騎乗を依頼した調教師や馬主の理解は得られません。大きなレースで、人気を背負う馬の騎乗依頼が少ないのは、これが理由だと思います。
それと正反対なのが、川田将雅騎手。イチかバチかの騎乗は絶対にせず、馬の力を最大限信じる王道の乗り方が信条です。ご存知のとおり、リーディング1位2位の騎手でありながら、GⅠレースでの勝率はけして高くありません。その理由は、絶対に無理をせず、馬の特性を活かす乗り方なので、あと一歩で勝てない、というケースが増える訳です。ただ、無理をしないため、馬の怪我が極めて少ないですし、次のレースに繋がる乗り方となっています。調教師や馬主からすれば、「力のある馬を乗せるのなら、この騎手」と信頼を得ることになります。
「騎手の技量」と言っても、様々な角度から検証しないと、その特長は見えてきません。ただ、そのコアになる部分は、「馬優先主義」の考え方が徹底しているか否か、にある気がいたします。