映画を観た。
★扉をたたく人
監督:トム・マッカーシー
出演者:リチャード・ジェンキンス、他
2008/アメリカ
ジャンベのリズムと主演リチャード・ジェンキンスの巧みな演技にざっくり魅せられてしまいました。さすがアメリカだなぁと思わず妙に感心するのは、異人種異民族の人間の偶然の出会いが簡単にセットできるということです。びっくりするような人間ドラマが起きるという多彩な日常性です。
問題提起は移民問題か難民問題かはよく解りませんが、本来的には人間の生きる空間にはボーダーはないはず。国家という権力の枠組みを作ったその時からボーダーは生まれ、人はその境界と共に生きる不自由さを背負うことになります。
映画はその不条理なボーダーに翻弄された若者を巡る話が、いつのまにか、若者の母親と老大学教授の男と女の物語へと変化してして行く、その物語展開の巧みさが凄いです。それはリチャード・ジェンキンスとヒアム・アッバスの見事な演技力のなせる技でしょう。
ヒアム・アッバスは、この映画と同じ境界という不条理なボーダーについて問題提起した映画「シリアの花嫁」でも、強靭で透徹したような美しい眼差しを持った女性を演じていました。とても魅力的でイメージが強烈にかぶります。
彼女が自分の息子のガールフレンドを初めて観た時に発した言葉が、確か「SO BLACK」だったと思います。ちょっとびっくりしたような渋い表情でしたが、すぐに彼女を受け入れる柔和な母親の顔になります。「オペラ座の怪人」を見に行った夜は、一人の魅力的な女性に変身していました。
クラッシックは4拍子が基本、アフリカ音楽は3拍子のリズム。ジャンベはROCK やJAZZなどの自由な演奏形態でも使われる事が多く、人の心を強烈にたたくリズムです。地下鉄ホームで一人激しくたたくラストシーンでは「孤独」、「叫び」、「抗議」とも感じましたが「未来」も感じました。その後の彼は如何に行動するのでしょうか。