駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

連絡しよう

2008年09月22日 | 医療
 「先生、中央署からお電話です」。あ、ひょっとしてと背中がぞくっとする。年に一度くらい警察から電話を貰う。誰かなと思いながら受話器を取る。「お忙しいところ、すいません。中央署の・・課の**です。先生の所にQさんという患者さんが、通っておられますね。最近どんな様子でしたでしょうか?。実は今朝自宅で亡くなっているのが見つかったものですから」。「えーっとちょっとお待ちください、あーっと最近いらしていませんが」。病名、最後の受診日、服薬内容などを知らせて電話を切る。電話だけでなく、手が空いている時は検屍を頼まれることもある。ほとんどが高齢で一人暮らしの方だ。おそらく我々(警察救急往診する開業医)しか知らない現実、音のしない寒風の吹きすさぶ暗くひっそりとした虚空に横たわる遺体、がそこにある。
 来る者は拒まず、去る者は追わずの原則を貫いてきた。患者さんには医者を選ぶ権利がある。何らかの理由でかかりつけ医を変えることは時々あることで、我関せずと思ってきた。最近受診されませんがどうしましたなどと連絡することはお互い気まずいことが多く、どことなく物欲しげで好まない。しかし大人しく人なつっこいQさんの場合はこの頃来ないねと話していたので、いかにも残念でこれで良かったのだろうかと感じた。「あの笑顔が忘れられないのよね」。と職員も言う。ミーティングで話し合い、高齢で一人暮らしの患者さんが来なくなったら連絡しようかとゆうことになった。
 人には歴史があり、医者の出来ることは限られているので、それで問題が解決するわけではない。それでも、いくらかの手助けはできるだろう。
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権力を忘れる権力者

2008年09月22日 | 医療
 桝添厚労大臣が突然後期高齢者医療見直しを言い出した。行政は晩飯の献立ではない。晩飯の献立だって急に変えれば、無駄と抵抗がある。
 今回の後期高齢者医療制度導入のために医療関係者が膨大な全く収益とならない事務仕事をしたことを、桝添さんは知らないのだろうか。患者さんは漸くこのわかりにくい後期高齢者医療制度を理解し始めたところではないか。
 制度の善し悪しは五ヶ月ではわからんぞ。評判と善悪は違う(一般論として)、評判が悪いからと止めていては、何も物事を為すことはできない。良いから導入したはずなので、説得するのが政治家の仕事だ。説得できなければ退場(武士なら切腹)の覚悟があると思う。なんでも簡単に投げ出すなと言いたい。猿ではあるまいし、朝三暮四ではだまされんぞ。
 過ちを正すに憚ることなかれなどと格好いいことは言って欲しくない。それは個人のこと、権力者は過てば選手交代。
 行政制度の運用に国民がいくら払っていると思っているのだろうか。杜撰な年金管理の調査費用は関係した責任職員に払って頂きたい。
 個人的には後期高齢者医療制度には問題があると思っているが、国が決めたことには粛々と従って診療している。権力は絶大なのだ。権力者の決めたことにはどんなに大きな責任が伴うか、忘れてもらっては困る。
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