駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

魔の時間帯

2020年03月07日 | 診療

              

 

 まあ医院に限らず、店仕舞いの時間帯に来るお客さん(患者さん)には要注意だ。そして我々はうどん屋蕎麦屋洋食屋よりも、ギリギリの患者さんを断りにくいので尚更なのだ。

 高血圧や脂質異常症で定期通院の方や風邪引きの方はまだしも呼吸困難、我慢できない腹痛、長引いている高熱など、医院では対応しかねる患者さんの場合とても困るのだ。十一時四十五分だから、時間内だろという患者さんは勘違いをしておられる。総合病院の初診は11時締め切りなのだ。勿論、院長は何時でもどうぞと言ってくれるけれども、現場で直接見る医師は昼飯がお預けになるので全然大歓迎ではなく、受話器を持ちながら何度も頭を下げて申し訳ありませんがとお願いすると、「早く送って下さい」ガチャリと電話は切れる。昔は総合病院側に居たから、痛いほどその気持ちが分かり、腹は立たない。

 昨日八十二歳で高血圧と肝硬変で通院中のお婆さんが朝から臍の周りが痛い血便が出たと十二時十分前に娘に付き添われて駆け込んできた。一目でこれは緊急入院が必要と診断し、まず総合病院次いで救急車を119番でお願いする。救急車は早くそれこそ五分でやって来る。その間に紹介状を急いで書かねばならない。三十年前は119番も救急隊員も横柄な人が結構居て色々不快な思いをしたが、この十数年応対は随分丁寧になった。ところが、救急車が直ぐに発車しなくなったのには首を捻ってしまう。受け入れ先の病院も決まっているのに、患者さんを救急車に乗せてから動き出すまでに時間が掛かるようになった。時には十分くらい駐まっている。救急隊はただ患者さんを運ぶのではなくなり、病歴を取ったり血圧を測ったり司令と連絡を取ったりと出車準備に時間が掛かるようになったらしい。額に汗してんてこ舞い大急ぎで送り出した医師としては、救急車内で吐血でもしたら困る、病院の医師はまだかと待っている、早く出発して欲しいと思うのだが。

コメント
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