海鳴りの島から

沖縄・ヤンバルより…目取真俊

「談合賠償放棄」を唱える輩

2008-03-21 20:59:15 | 政治・経済
 談合問題で揺れているのは名護市議会だけではない。沖縄県議会でもとんでもない論議が行われていた。琉球新報3月20日付朝刊に次のような記事が載っている。
 
〈「談合賠償放棄」県議会決議見送り/県負担発生を懸念/「準備不足」の指摘も
 県発注工事の談合問題に係る県の損害賠償請求をめぐり、県議会土木小委員会(小渡亨委員長)は十九日、地方自治体の「権利放棄」の規定に基づく県の請求権放棄について、二月定例会での議決見送りを決めた。与野党間で水面下の調整を図ったが、債権放棄した場合の県負担への懸念がぬぐえず「準備不足だった」との声も漏れる〉

 19日夕方のテレビニュースでもやっていたが、この報道に接して呆れ果ててしまった。こんな決議が上がろうものなら、沖縄は全国から物笑いになるだろう。談合は違法であり県に被害を与えたから損害賠償をしろということだ。それを放棄するというのは、県議会が違法行為を容認するに等しい。建設業者の倒産が相次ぎ県経済に影響を与えるからといって、立法機関が違法行為を容認してしまったらおしまいだろう。今まで談合で不当な利益を上げてきた企業が社会的制裁を受けて倒産しても、それこそ企業の自己責任でしかない。
 仮に県の土木建築部が債権放棄すると、国に国庫補助金分の返還をしなければならないが、それは県の一般財源から負担することになるという。19日のNHKニュースでは、その額を約70億円と見積もっていた。それを知って野党が決議をしぶり、結局この件は六月議会に持ち越されたのだが、委員会で議論されただけでも、沖縄の病弊の深さを感じずにいられない。
 沖縄経済は3Kといわれ、基地・公共工事・観光の三つに依存する構造が特徴とされてきた。日本復帰後、立ち後れていた社会資本の整備を進めるために公共工事が集中し、県内では建設業者が乱立することになる。九〇年代半ばになって一通り整備がすみ、バブル経済が弾けて日本全体が不況に苦しむころ、本来なら沖縄もそこで建設業者の淘汰が起こっていたはずだ。しかし、そこに三名の米海兵隊員による性暴力事件が起こった。一九九五年九月に起こったその事件に対する県民の怒りは、八万五〇〇〇人が集まった10.21県民大会を実現する。大田知事の代理署名拒否と相まって、反基地の運動は日米の安全保障体制を脅かす事態と言われるまでに高まった。
 その対策として沖縄への「格段の配慮」が打ち出され、九州・沖縄サミットや二千円札の発行、島田懇談会事業や北部振興策など基地対策費のばらまきが行われた。それを享受してきたのが、建設業界をはじめとした県経済界だったのだ。普天間基地の「移設」先として名護市辺野古が打ち出されてからは、市長選挙のたびに動員された建設業者で名護十字路が埋まったものだ。
 米兵の性暴力にさらされた少女の犠牲を自らの利益に換え、日本政府がばらまく「振興策」のうまみを談合で分け合ってきた者たちが摘発され、県議会に賠償放棄を求めているのである。そういう建設業界に同情など必要ないし、もし違法行為を容認するような議会なら、議員と業界の癒着が疑われてしかるべきだ。
 それにしても名護市議会や県議会で行われている議論を見ていると、沖縄の内部崩壊が進んでいることを感じる。「沖縄特例」に慣れきってしまい、自浄能力すらも失ってしまえば、沖縄は自壊していくだけだろう。それを喜ぶのは日本政府と沖縄を隷属的地位に置き続けることで利益を得るヤマトゥーたちなのだ。道州制をめぐる議論で沖縄自治州を求める声が多いが、議会や経済界がこういう状況で、かつ県民もそれに無関心な状況では、実現できるはずがない。県議会での談合賠償放棄決議を許してはならない。

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