「幕末。愛に生きる侍がいた」
庄内地方をこよなく愛した作家・藤沢周平原作「隠し剣 鬼の爪」と「雪明り」の2本の短編を基に山田洋次監督が、「たそがれ清兵衛」に続いて制作した本物指向の時代劇。
同監督と言えば、「男はつらいよ」、「釣りバカ日誌」などの抱腹絶倒の娯楽作品が超有名であるから、一体どのような作品に仕上がるものかと・・・第1弾の「たそがれ清兵衛」やこの映画を観賞し、素晴らしいと感銘を受けたことが思い起こされる。
重厚な本格派時代劇でリアル性を追求した黒沢明作品とひと味違って、原作の持つ自然の美しさと下級武士の苦悩が見事に描かれている。また、本格的時代劇に挑戦の山田監督、どの作品も主人公が下級武士ながら剣の達人であるため、殺陣についてもさまざまな工夫がなされ、昔の娯楽作品の東映時代劇などと違って、スーパーマン的な殺陣でないところがいい・・・。
後半の見どころ、立ち会いとなった片桐宗蔵(永瀬正敏)と狭間弥市郎(小澤征悦)の二人、剣が本身に見えるくらいの素晴らしいデキにあり、鬼気迫る双方の剣さばきが・・・さらにいい。
いつものように藤沢周平作品の舞台は、庄内地方の架空の地である。「隠し剣 鬼の爪」も東北の小藩・海坂藩(うなさかはん)が舞台となっており、今回の時代背景は幕末とのこと。
平侍・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、一刀流の師匠戸田寛斎(田中泯)から秘剣「鬼の爪」を伝授されているが、同門の狭間弥市郎(小澤征悦)の方が剣術の腕は、3本の内2本をとるほどであった。そのため、弥市郎は自分に秘剣を授けられなかったことを根に持っているところがある・・・。
物語の方は、狭間弥市郎が江戸屋敷に出向くところ、片桐宗蔵と妹・志乃(田畑智子)の婿となる島田左門(吉岡秀隆)などが河畔の船着き場で見送るところからはじまる。遠くの山並に雪が残っており、早春の一コマと東北の小藩を印象づけている。
宗蔵の父は、家臣の非を一身に受けて切腹したことから、大きな屋敷から小さな屋敷に移り住み、母親の吟(倍賞千恵子)と妹・志乃、それに女中のきえ(松たか子)と暮らしていた。その後、志乃が島田左門に嫁ぎ、母から一廉(ひとかど)の女となるための立ち居振る舞いなどを躾けられた「きえ」も町屋の商家に嫁いで行った。
そして、3年が過ぎるが、その間母親も病で亡くなる。ある雪の日、宗蔵は3年ぶりにきえに出会うが、きえは見る影もなくやつれているように映る・・・。
妹から彼女のひどい境遇を聞いた宗蔵はたまらず、彼女を助け出すが・・・と、物語は大きく動いてゆく。さらに江戸屋敷にいた弥市郎が謀反の張本人となり、海坂に籐丸籠(とうまるかご)で移送され、郷入りという山奥の座敷牢に閉じ込められる極刑に処された。
秘剣「鬼の爪」とは、いかなる場面で使うのか・・・物語が進む内に。
うーん、まだ、分からない。一撃必殺の秘剣
さて、この映画には随所に素晴らしい脇役が登場する。「男はつらいよ」のさくらの倍賞千恵子さんが母親。その母の法事の席に集まった口うるさい親族・伯父の片桐勘兵衛(田中邦衛)、唾を飛ばしながらの小言の熱演・・その隣に座っている島田門左衛門(綾田俊樹)との漫才のような掛け合い。ちょっとしたユーモアが入れてある
幕末の設定であるから、西洋式の軍隊訓練を取り入れる場面、侍の腰を落とした所作や動きを西洋式の動きに替えるための訓練ぶり・・・このカットが実にユーモア一杯に描かれている。また、脇を固める下級武士役で同監督作品常連の赤塚真人さんがいいね・・いい味を出している。物語も終盤になると“へらへら”していた赤塚真人さんたちも西洋式の動きに慣れて、いつでも銃を構える軍隊として対応できるようになっていた。
ところで、山田監督作品の時代劇によく出演し、片桐宗蔵に付き従う“中間”役の役者さん・・・名前が分からないが、台詞もほとんどないが佇まいが素晴らしく、その役柄の雰囲気をうまく出している。やはり、このように影になる脇役の方がいるから、1本の映画が引き立ってくると思える。後日、神戸浩(カンベヒロシ)さんと判明、山田監督作品によく出演し監督も重宝している役者さんとのこと。
さらに悪を演じる家老・堀将監( 緒形拳)と太鼓持ちの大目付・甲田( 小林稔侍) の役どころ、この悪があるからこそ主役も引き立つ・・・さすがに演技達者のお二方。
この映画、随所に美しい日本の四季と庄内平野の原風景が映し出されており、それを見るだけでも藤沢周平作品の雰囲気に触れることができる。
昨日、「たそがれ清兵衛」を思わずレンタルした。(夫)
[追 記]~あらすじ~
幕末。片桐宗蔵(永瀬正敏)は昔、自分の家に奉公していたきえ(松たか子)と再会する。商家に嫁いだきえはやせ細り、無残な姿だった。妹(田畑智子)から彼女のひどい境遇を聞いた宗蔵はたまらず、彼女を助け出すが……。
(出典:Yahoo!映画)
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庄内地方をこよなく愛した作家・藤沢周平原作「隠し剣 鬼の爪」と「雪明り」の2本の短編を基に山田洋次監督が、「たそがれ清兵衛」に続いて制作した本物指向の時代劇。
同監督と言えば、「男はつらいよ」、「釣りバカ日誌」などの抱腹絶倒の娯楽作品が超有名であるから、一体どのような作品に仕上がるものかと・・・第1弾の「たそがれ清兵衛」やこの映画を観賞し、素晴らしいと感銘を受けたことが思い起こされる。
重厚な本格派時代劇でリアル性を追求した黒沢明作品とひと味違って、原作の持つ自然の美しさと下級武士の苦悩が見事に描かれている。また、本格的時代劇に挑戦の山田監督、どの作品も主人公が下級武士ながら剣の達人であるため、殺陣についてもさまざまな工夫がなされ、昔の娯楽作品の東映時代劇などと違って、スーパーマン的な殺陣でないところがいい・・・。
後半の見どころ、立ち会いとなった片桐宗蔵(永瀬正敏)と狭間弥市郎(小澤征悦)の二人、剣が本身に見えるくらいの素晴らしいデキにあり、鬼気迫る双方の剣さばきが・・・さらにいい。
いつものように藤沢周平作品の舞台は、庄内地方の架空の地である。「隠し剣 鬼の爪」も東北の小藩・海坂藩(うなさかはん)が舞台となっており、今回の時代背景は幕末とのこと。
平侍・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、一刀流の師匠戸田寛斎(田中泯)から秘剣「鬼の爪」を伝授されているが、同門の狭間弥市郎(小澤征悦)の方が剣術の腕は、3本の内2本をとるほどであった。そのため、弥市郎は自分に秘剣を授けられなかったことを根に持っているところがある・・・。
物語の方は、狭間弥市郎が江戸屋敷に出向くところ、片桐宗蔵と妹・志乃(田畑智子)の婿となる島田左門(吉岡秀隆)などが河畔の船着き場で見送るところからはじまる。遠くの山並に雪が残っており、早春の一コマと東北の小藩を印象づけている。
宗蔵の父は、家臣の非を一身に受けて切腹したことから、大きな屋敷から小さな屋敷に移り住み、母親の吟(倍賞千恵子)と妹・志乃、それに女中のきえ(松たか子)と暮らしていた。その後、志乃が島田左門に嫁ぎ、母から一廉(ひとかど)の女となるための立ち居振る舞いなどを躾けられた「きえ」も町屋の商家に嫁いで行った。
そして、3年が過ぎるが、その間母親も病で亡くなる。ある雪の日、宗蔵は3年ぶりにきえに出会うが、きえは見る影もなくやつれているように映る・・・。
妹から彼女のひどい境遇を聞いた宗蔵はたまらず、彼女を助け出すが・・・と、物語は大きく動いてゆく。さらに江戸屋敷にいた弥市郎が謀反の張本人となり、海坂に籐丸籠(とうまるかご)で移送され、郷入りという山奥の座敷牢に閉じ込められる極刑に処された。
秘剣「鬼の爪」とは、いかなる場面で使うのか・・・物語が進む内に。
うーん、まだ、分からない。一撃必殺の秘剣
さて、この映画には随所に素晴らしい脇役が登場する。「男はつらいよ」のさくらの倍賞千恵子さんが母親。その母の法事の席に集まった口うるさい親族・伯父の片桐勘兵衛(田中邦衛)、唾を飛ばしながらの小言の熱演・・その隣に座っている島田門左衛門(綾田俊樹)との漫才のような掛け合い。ちょっとしたユーモアが入れてある
幕末の設定であるから、西洋式の軍隊訓練を取り入れる場面、侍の腰を落とした所作や動きを西洋式の動きに替えるための訓練ぶり・・・このカットが実にユーモア一杯に描かれている。また、脇を固める下級武士役で同監督作品常連の赤塚真人さんがいいね・・いい味を出している。物語も終盤になると“へらへら”していた赤塚真人さんたちも西洋式の動きに慣れて、いつでも銃を構える軍隊として対応できるようになっていた。
ところで、山田監督作品の時代劇によく出演し、片桐宗蔵に付き従う“中間”役の役者さん・・・名前が分からないが、台詞もほとんどないが佇まいが素晴らしく、その役柄の雰囲気をうまく出している。やはり、このように影になる脇役の方がいるから、1本の映画が引き立ってくると思える。後日、神戸浩(カンベヒロシ)さんと判明、山田監督作品によく出演し監督も重宝している役者さんとのこと。
さらに悪を演じる家老・堀将監( 緒形拳)と太鼓持ちの大目付・甲田( 小林稔侍) の役どころ、この悪があるからこそ主役も引き立つ・・・さすがに演技達者のお二方。
この映画、随所に美しい日本の四季と庄内平野の原風景が映し出されており、それを見るだけでも藤沢周平作品の雰囲気に触れることができる。
昨日、「たそがれ清兵衛」を思わずレンタルした。(夫)
[追 記]~あらすじ~
幕末。片桐宗蔵(永瀬正敏)は昔、自分の家に奉公していたきえ(松たか子)と再会する。商家に嫁いだきえはやせ細り、無残な姿だった。妹(田畑智子)から彼女のひどい境遇を聞いた宗蔵はたまらず、彼女を助け出すが……。
(出典:Yahoo!映画)
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