午後6時、暑かった日差しも八ヶ岳の影に消え 辺りは夏の夕を包むような余韻の空気を打ち消すような爽やかな風が千曲川の沢を渡っていく。 駅のホーム直前まで広がる高原野菜の畑では、このところ雨が少ないために野菜に水遣りを一日の作業の最後としてだろう農家のお父さん一人で続けていた。一緒に作業していて少し前に家に帰った家族が、お父さん帰りが遅いなあと、夕飯の準備をしていて心配をしているのでは、と思うほど一生懸命に作業している姿を撮影時間が来るまで見入っていた。 そんなところへヘッドライトを光らせながら小諸行きの列車がホームに入ってきた。誰も乗降客は居ないだろうなと思っていたが、小さな子供二人を連れた若夫婦が降りてきた。列車が発車してしまってもホームで子どもが走っていたり、行き先表示板の前で家族で撮影している様子がここからも確認できた。小海線は単線、この後上りの小淵沢行きがやってくる。清里あたりに車を停めて高原列車の小旅行を楽しんでいるに違いない。この駅では珍しい光景に出会い、誰も居ない山の中の駅のホームで遊ぶ家族にまた旅ドラマを見たようだった。 |
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