私が・愛した・たぬき

　たぬきを愛した人、信楽の狸をこよなくめでた方など、タヌキ好きの人達にスャbトを当てたコーナーも、「たぬき御殿」にはあった。

　狸庵という京都の陶潔ﾆが、最初は京都で狸のやきものなどもつくっていたらしい。彼は昭和６年に信楽に移り住み、狸専門の窯『たぬきや』をひらいて大繁盛したという。

　そして昭和２６年、昭和天皇が信楽に行幸された。そのとき狸のやきものにも日の丸の旗を持たせて道に並べたそうである。その光景を目にし、昭和天皇は大感激されたという。「おさなとき　あつめしからに　懐かしも　信楽焼の　たぬきを見れば」という歌を詠まれた事に併せて、歓迎する狸のやきものが新聞報道され、一躍、信楽狸は全国的に名を轟かせた。

　実は昭和天皇は皇太子の時に、狸のやきものを好んで集められておられたので、京都御所の女官たちが、狸のやきものを買い求めていたのだ。そのことを昭和天皇は思い出されたのである。昭和天皇がかつては狸のコレクターだった、というのはなんとも微笑ましい。

　明治、大正にかけて活躍した文人画家、富岡鉄斎が手がけた狸グッズも数点あった。戯れ描きのような鰍ｯ軸の書画、お湯のみのように小振りで素朴な狸絵の茶碗、狸香合などは、どれも、ほのぼのと楽しく、暢気な感じなので気持がくつろぐ。

　東京でも詩人の戸川残花（１８５５≠P９２４）をはじめ文化人たちが集って「たぬき会」を結成し、たぬき談義を繰り広げていたという。

　しかし信楽の狸を愛したのは、日本人ばかりではない。なんとあのスペインの抽象画家、ジョアン・ミロも信楽に来ていたのだ。ミロと彼が微笑みながら見上げる信楽大狸のツーショット写真（『件p新潮　１９６６年１１月号』より）がパネルにされ、１行の説明書きが。

　信楽狸を見たミロは「これはなんという動物なのか、まったく独創的だ・・・」と言ったという。