教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

もうTVはダメかもわからんね

2012-04-17 00:07:41 | 経済/経済/社会
TVが売れないらしい。

ひさびさに街の電気屋にいってみたらデカいTVがあんまり安いもんで驚いた。
これじゃあ売れたとしてももうかりゃしねぇ。



家電メーカーにとってTVは看板商品だった。
かつては。

今はどうかは知らん。
看板商品ではあるものの、同時に何とかしなければならない最もアタマの痛い問題であることのほうが大きいような気がする。

どうしてこうなった?

世間には多種多様な分析がある。
だがその中にはメーカーらしさを失ったということがあるような気がする。



20年前のTVはどうだったか?

多くのメーカーが自前でブラウン管を作っていた。
同時に半導体も作っていた。
回路設計は自分でやった。
製造は自社工場だった。

今はどうか?

液晶パネルは買い物を使っている大手メーカーもある。
高周波回路は受信モジュールを買ってきてポン載せになっているものもある。
電源など基板ごと買い物の場合もある。
ファブライト化のためか液晶ドライバ他ほとんどの半導体は買い物になった。
プロセッサは自前で設計しているようだが製造はたぶんTSMCだろう。
回路設計は自分でやっているかもしれないが、最近はそれも外注が多いらしい。
組み立て工場はフォックスコンに売却した。

これは正しいのか?

これはいわゆる水平分業を展開した結果である。
わざわざ自分が得意でないところまで内製しなくてもいいというリクツである。

これは正しい。
それを非難されるいわれはない。

しかし!

じゃあ
「あなたの得意なところっていったいどこなんだい?」
と聞かれて、いったいどうやって答えるのだろうか。

「倍速や高諧調や3D対応などの高画質を実現させるプロセッサにこそ誇るものがある」
と言うだろう。
それに多額のプレミアムを支払ってでも喜んで買うお客さんがたくさんいればいいのだが、残念ながら今の世はそうはなってはいないようだ。

では、サムソンはどうなのか?

ローカライズして地域別の好みに合ったものに作り分ける。
政府にたのんで通貨安にしてもらい製造部門の人件費を安くあげる。
日本製より品質を落として日本製より安く作る。
日本製だと誤解して買ってしまうような広告をする。

明快である。
わたしはサムソン製を買うなんてまっぴらゴメンで値段を倍払ってでも日本製を買いたいくらいだが、作戦が明快でわかりやすいという点においては評価する。

そうではないやりかたではダメなのか?

いや、その正反対のやりかたで成功した例も当然ある。
アップルである。

液晶パネルは日本の某と同様に買い物である。
高周波回路などはBroadcomなどのICをポン載せして終わりで、これは某日本製と大差ない。
プロセッサを自前で設計しているのかどうかは知らんが、コアはARMだったりGPUはImagination Technologiesだったりで、もし自社設計のところがあったとしても実は半分もない。
プロセッサの製造は当然外注でサムソンが担当しており、これも日本のメーカーがTSMCで作るのと大差ない。
組み立て工場は某日本製とおなじフォックスコン。

しかし!

アップルの得意とするところもまた明快である。
アップル製品を買えばできるサービスにこそ真の競争力がある。
たとえばApp Store。

こうやって見てみると、日本製のTVっていったい何なのかということがイマイチ伝わってきてない気がする。
TVがあまりにも安くなりすぎて日本で作るようなもんじゃなくなってることも原因の1つだが、そうではなくて製品としてビミョーなものでしかなくなっているのが原因のような気がしないでもない。

たぶんそういうことはわたしが言うまでもなく中の人もわかっている。
しかしどうすればいいかという案が出てない。
わたしも人からかわりに案を出せと言われれば困るわけで、ある意味これは日本の電機屋さん全般的な問題なような気がしないでもない。

だから現時点ではより競争力を失った部分から順に切り離して外注化することで何もしなかった場合よりは少ない赤字に留めるという消極的な作戦に出ているのだと思われる。
まあ、案がないという制約条件下においてはうまくやってるんだよ、きっと。



2年ほど前のことである。

親に
「TVが壊れたんだけど買い換えるならソニーかシャープかどっちがいいかアドバイスくれ」
と言われたことがある。

わたしは
「ソニーだったら液晶パネルは韓国製だが、シャープだったら液晶パネルは国産だ。その2つのうちからなら俺だったらシャープだな」
と答えておいた。

とはいってもシャープのTVが儲かってるかというと、そんなことは全くない。
シャープも液晶パネルの苦戦で倒産懸念にまで追い込まれて外資による資本注入となってしまった。

しかし。
シャープはシャープ製品とは何なのかを明快に提示している。
例えばひところ亀山モデルなどと言っていたアレである。

世の中には
「全般的にコストの高い日本で中韓と同じものを作っているようじゃダメだよ。ビジネスモデルが時代遅れじゃね?」
などと言う者も少なくない。

エルピーダがDRAMの運命と心中する覚悟でやっていたのと同じく、シャープは液晶パネルの運命と心中する覚悟でやっていて、本当に心中しかけるのではないかという懸念が出るところまでいっている。
それが良いか悪いかはわからないが、工場の稼働率をして悪いと語る者のほうがむしろ多いかもしれない。
だがわたしはシャープが液晶パネルにこだわったTVを出すことをもってソニーより評価する。
シャープもソニーも同じく酷い赤字だが、ソニーのTV事業のほうが戦略的にさらに迷走しやすい状況にあるのは間違いない。

「シャープのTVとは何なのか? ソニーのTVとは何なのか?」
どっちが答えやすいかは明白ではないだろうか。



シャープの増資を受け入れた鴻海の親分が次のように語っている。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20120328/230331/?ST=pc

> 私はこの先の10年で、かつての米国のRCA社やZenith社のように崩壊する企業が日本から出てこないことを願っています。


この言葉に身震いするほどの恐ろしさを感じた。