http://www.elpida.com/ja/news/2011/06-27.html
TSV(through silicon via)って言葉ひところ流行ったけど、最近あんまり聞かないなって思わないだろうか?
少なくともわたしはそう思う。
革新的なことができそうだとワクワクしたものだが、待てど暮らせど使われない。
それがTSVだ。
世間はどう思っているのか?
端的にそれが書かれた記事をみつけた。
↓これである。
日本のTSV技術は大丈夫か?
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120416/212830/?ST=print
> このように当初TSV技術は日本勢が先行していましたが、その後TSVの用途はなかなか広がらず、講演会やセミナーでは「机上の空論だ」と揶揄する声も聞かれるようになりました。
(中略)
> 「日本のTSVは世界の流れに比べて1~2周遅れている」(某装置メーカー)との声も聞こえてきます。
ちょっと前までは
「日本の実装は世界一ィィィ!」
とシュトロハイムばりに偉そうなことを言っていられたものだが、いつの間に周回遅れになってんだ・・・。
スタックド シリコン インターコネクト テクノロジ
http://japan.xilinx.com/technology/roadmap/ssi-technology.htm
先の記事にも少し触れられているが、TSVには↑こういう応用例が現れた。
これを端的にいうと、最先端の微細プロセスで巨大なchipを作ると歩留まりが悪すぎてやってらんないので、それを4分割して歩留まりを上げ、TSVのSiインターポーザーを使って間を配線し、巨大なchip相等のものを作るというものだ。
これを見て「なるほど!」と思った。
技術的なアイデアとしては大したことはない。
(売り物になるほどの信頼性を実証するのは大変な労力を要するはずだが)これは試作してみるだけなら多分やればできるような代物だ。
そうじゃないんだ。
注目すべきは応用例なんだ。
最先端の微細プロセスで巨大なchipを作るという、非常に高性能だが非常に高価な製品。
そういうものは一般的にほとんど量が出ない。
だが、FPGAならそれなりに出る。
ならば銭と人をかけて実装技術を開発する価値がある。
こういう新技術がジャストフィットする素晴らしい応用例を考えるのは日本人がかなり苦手とするところな気がする。
SiCウェーハで有名なCreeがLEDを自前で生産するというジャストフィットする応用例を見つけたというのも同様だ。
最近なんだか日本の大手電機メーカーには新技術を製品に投入していくだけのアグレッシブさが失われつつあるような気がする。
かつてはハフニウムをまぜたHigh-Kゲート酸化膜の40nmプロセスをすごい速さで立ち上げたNECは賞賛したいアグレッシブさを有していたが、今のNECにそのアグレッシブさは無い。
(これはアグレッシブではあっても商売的には失敗だったと批判する意見もありうるかもしれないが)
本来ならばこのXilinxがやったTSVのSiインターポーザーを使った巨大1chip相当品なんかは日本のメーカーにやってほしかった。
たとえば富士通のASIC部隊は高額なchipの受注の数も多く利益も多少出しているはずで、本当は富士通ならできたはずだった。
わたしは非常にくやしい。
世間では、iPodは本来ならばソニーが出すべき製品だったとくやしがる面がある。
このTSVの件についてはわたしはそれ以上にくやしい。