1970年公開のイタリア・フランス・ソ連の合作映画です。
戦争によって引き裂かれた若い夫婦の数奇な運命を、名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督が哀感を込めて描いています。
全編に流れるヘンリー・マンシーニの哀切な主題曲と、ラストに一面に広がるひまわり畑のシーンがあまりにも有名です。
結婚による十二日の特別休暇(あるいは男はこれが目当てだったかもしれません)だけを過ごして、離れ離れ(兵役を逃れるために狂人の真似をした狂言のせいで、皮肉にもアフリカ戦線でなく極寒のロシア戦線におくられてしまいます)になった夫婦を、イタリアの名優、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが演じています。
戦争が終わっても、夫はなかなか帰らず、生死さえも不明です。
こういう状況は、敗戦国の日本やドイツでも同様で、日本映画では思い出せませんが、ドイツ映画では「マリア・ブラウンの結婚」が有名です。
あきらめきれない妻は、わずかな情報を頼りにソ連まで探しに行きます。
しかし、皮肉なことに、夫はその地で命を救ってくれたロシア娘と結婚して、今では子どもまでいます。
妻は、夫と再会を果たした駅で、言葉も交わさずに彼が乗ってきた列車に飛び乗り、あたりもはばからずに号泣します。
取り残された夫は、やはり今でも妻を愛していたことに気づき、しだいに元気をなくしていきます。
そんな男を、優しい新しい妻は、かつての妻と再会するために、イタリアへ送り出してくれます。
二人はイタリアで再会を果たしますが、その時には女性の方も再婚していて、子どももいました。
二人でどこかへ行ってやり直そうと言う男に、彼女は子どもをおいては行かれないと拒みます。
しかし、列車で去っていく男を見送って、彼女はまた泣き崩れます。
この映画では、もちろん主演のソフィア・ローレンの魅力(若いときの奔放なセックスアピールに溢れた女性、行方不明の夫をさがす鉄の意志を持ったたくましい女性、再婚後の優しい母の魅力を持った女性を、鮮やかに演じ分けて見せます)に溢れているのですが、ソ連での新しい妻を演じたリュドミア・サベーリエワの可憐でけなげな女性も、対照的な魅力を持っています。
また、彼女たち、イタリアとソ連の代表的な美人女優に挟まれて、ハンサムだけど優柔不断なイタリア男を演じるのには、やはりマルチェロ・マストロヤンニしかいないでしょう。
ロケ地のソ連をやや美化しすぎていることは気になりましたが、彼方まで続くイタリア兵の墓標やあたり一面のひまわり畑(その下には、無数のロシア兵、ドイツ兵、イタリア兵、そして幼い子どもたちや年寄りまで含めたロシアの民間人の亡骸が埋められています)のシーンは、戦争のむごさ、残酷さを雄弁に語っています。
この映画は、舞台がウクライナだということもあって、2022年になって再評価がなされています。
ロシアのウクライナ侵攻が、この映画で描かれた場所でも行われているであろうことを考えると、同じような悲劇がウクライナだけでなくロシアでも繰り返されているわけで、人類はなんと進歩をしない生き物だということを思い知らされます。
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